平成20年度「若手技術者セミナー」は今年度で31回目を迎えました。今回は、6月に発生した岩手・宮城内陸地震の被災地研修および「技術の伝承」を主題とした「若手技術者セミナー」を行いました。
研修場所は「荒砥沢ダム:大規模地すべり」を選定し、恒例となりました若手技術者のディスカッション・親睦の集いを行いました。
岩手・宮城内陸地震で発生した荒砥沢ダム上流の地すべりは、地震起因としては日本で過去最大級の「大規模地すべり」といわれてます。この「地すべり」現地を観察し、地形・地質・調査内容等の概要について研修を行いました。地震を誘因とする大規模地すべりの地形・地質状況を確認し、調査手法や苦労話を見聞することで、若手技術者の技術力向上を目的としました。また、安全面においても同様の災害時には、今回研修を行った体験が役に立つものと期待します。
ディスカッションでは現在地質調査業に携わっている若手技術者の率直な意見・要望・疑問点を聞く機会をもって、技術者相互の向上と今後の協会活動の参考にすることを目的としました。また、地質調査業界では、技術者の高齢化に伴い「ベテラン技術者」が培ってきた技術やノウハウの伝承が問題となっており、技術の伝承についても主題としました。今回は、協会より技術士が多く参加し、若手に対しての技術の伝承を行えたと思っています。
●場所:宮城県栗原市栗駒文字深山岳「荒砥沢ダム:大規模地すべり」宮城北部森林管理署:調査現場
●セミナーの内容
一日目
二日目
研修の内容を以下に簡単に記述します。
地震災としては日本最大級の大規模地すべりを目の当たりにして、その変状量の大きさに驚きました。時間的にダム側から少し入った程度の研修・踏査でしたが、十分に大規模地すべりの概要を理解出来たと思います。自分にとっても今までにない体験で貴重であったと思います。現地では、長大なモノレール架設・深尺の調査ボーリングを行っており、それぞれの安全面の点検を行い、苦労話を見聞し若手においては、今後の仕事において役に立つ良い内容であったと思います。また、最後に実際のコアを観察させてもらい、岩盤状況の説明を受けました。
すべり面深度や地すべりの発生機構などについて活発な質疑応答があり、技術力の向上に寄与したものと思っています。
以下、今回の現地研修時に話題になった主な点を列記します。
以下に研修の状況を写真で報告します。
参加者は、“岩手・宮城内陸地震”により発生した大規模地すべり(荒砥沢地すべり)の現地視察を終えた後、「かんぽの宿:一ノ関」に戻り食事を兼ねた『意見交流会』に参加しました。
本年度は、例年よりも参加者数が少なかったことから、どのような『意見交流会』になるのか不安でしたが、“池原技術委員長の挨拶” を号令として、例年通りの活発な交流会となりました。
隣室での“延長線” にも全員が参加し、“仕事の話”“会社の話”“プライベートな話”等々で盛り上がりがみられました。除々
普段は接する機会が少ない他社技術者や女性技術者と本音で話ができた有意義な時間であったと思われ、この光景をみると『若手セミナーの意見交流会』の意義を感じ、次年度以降も継続すべきイベントであることを再認識しました。
内藤委員が座長となり荒砥沢地すべりの概要を主題に地質調査技術は元より、会社の上司に聞けない悩みや、今後の地質調査のあり方についての熱い討論、意見交換を行いました。
参加された技術者は、経験年数が新入社員から10年程度の現場管理技術者と、経験年数10年以上の技術の伝承者である技術員とで幅広い討論を行い、経験が浅い人は中堅技術者、伝承者の高い技術の習得と、中堅技術者は、伝承者のノウハウ(経験)を吸収出来たのではないかと思いました。
各討論の内容は、若手の技術者が実務で抱える疑問や会社の上司に相談できないような悩みが多く上げられ、それに対して活発な議論、伝承者のアドバイスがなされました。特に今後の地質調査業の将来に対して、活発な意見や討論を行い、今後の地質調査に対して皆さん真剣に考え、この仕事に誇りを持って取り組んでいることを実感した次第であります。
討論に参加された若手技術者の皆様は、他の参加者や伝承者の意見を聞くことで、今後の業務の参考になったかと思います。
今回参加された若手技術者の皆様が、今回のセミナーで行った研修・討論を機会に技術の向上と今後の糧となるように願っております。
今年度の研修テーマは6月に発生した岩手・宮城内陸地震の被災地研修および「技術の伝承」を目的として、近年にない活発な研修であったと思います。
アンケート結果からも有意義な技術の伝承があり、良い研修であったと思います。また、アンケートの内容・意見については今後の協会活動の参考とさせていただきます。
今回は現場管理者の方から、被災地を対象とすることであり、地元に配慮しての研修計画をとのことで、比較的小人数での研修となりました。実際、各社ともに業務多忙の時期での開催であり、直前のキャンセル等で参加人数が少なかった様に思います。この若手セミナーは回を重ねて参加することで、技術力が向上し人脈も構築されると思っており、会員各社の方々にはこの点をご理解の上、若手社員をこのセミナーに今後とも参加させて頂きたく紙面を借りてお願い致します。
また、この「若手セミナー」に対するご意見や企画が有りましたら、協会にお寄せ下さるようお願い致します。
最後に、今回のセミナーの開催にあたり、全地連様からの助成、さらに宮城北部森林管理署様、国土防災技術株式会社様には多大なるご協力をいただき、ここに謝意を表します。