東北地質調査業協会 広報委員長 |
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1.地質情報展とは
地質情報展は平成9年より地質学会学術大会に合わせて開催され、今回で12年目となる。主催者である(独)産業技術総合研究所地質調査総合センターの研究内容を広く知ってもらうために、最新の地質学の研究成果を展示パネルや映像を使って専門外の人たちにわかりやすく紹介するイベントである。
平成20年度の「地質情報展2008あきた─発見・体験! 地球からのおくりもの─」は、産業技術総合研究所地質調査総合センター、日本地質学会、秋田市教育委員会・秋田大学工学資源学部附属環境資源学研究センターの主催、秋田大学、秋田大学鉱業博物館、NHK秋田、東北地質調査業協会、石油鉱業連盟、秋田県教育庁生涯学習課の後援により平成20年9月19日(金)〜21日(日)に秋田市民交流プラザ「ALVE(アルヴェ)」1階「きらめき広場」で開催された。
2.「2008秋田」の様子
幸いにして、筆者は秋田への出張があり、初日の午前中に訪れることができた。会場は、最新の地質学に関する成果を紹介する「展示と解説のコーナー」と見学者が実験などを行うことができる「体験コーナー」のほか、「地質標本館がやってきた」、「地質なんでも相談」、「地質調査総合センターの出版物紹介・販売」「ジオパーク」などの特設コーナーも用意され、移動地質博物館の様相を呈する大規模なイベントであった。
3.展示と解説のコーナー
展示と解説のコーナーは主に秋田県の地質を題材にして広範な地質学の最新の研究成果をパネル、映像、標本などを用いて展示していた。21 のブースが用意され、各ブースでは数人の地質調査総合センターのスタッフが見学者に展示内容をわかりやすく説明されていた。
地質情報展の開会直後の会場
床のシームレス地質図に見入る人々
以下に展示内容を紹介する。
[秋田の地質コーナー]
(1) 秋田の大地を形作るもの、(2) 段丘地形:大地の変動をさぐる、(3)20万分の1日本シームレス地質図。
[海洋地質コーナー]
(4) 海の地質調査、(5) 日本海の環境変化、(6) 秋田沖にもある海底活断層、(7)チムニー:海底火山の金属資源。
[地震・地すべり・火山コーナー]
(8) 秋田県の活断層、(9) 海を田畑に変えた地震:1804年象潟地震、(10) 秋田県で発生した大地震:1896年陸羽地震、(11) 秋田沖の海底地質と1983年日本海中部地震、(12) 津波が釣り人を襲う瞬間、(13) 秋田周辺の深部地盤構造、(14)地すべりの牙と恵み、(15) 噴火の脅威とその恵み。
地質情報展の開会直後の会場
海底の熱水噴出孔に形成された煙突状の硫化鉱物鉱体。同様のものが秋田県花岡鉱山に産する。
[地下の恵みコーナー]
(16) 足下にあるエネルギー:地熱、(17)秋田県の石油・天然ガス資源、(18) 秋田県の金属鉱物資源(鉱物の写真を配布)、(19) 秋田の水、(20) 金属リサイクル、(21) 東北地方の砂。
4.体験コーナー
体験コーナーは、16のブースが用意され、様々な実験や実演を通して子供達にも楽しく地質学を学べるように工夫されていた。
以下に体験コーナーの内容を紹介する。
キッチン火山実験の実演の様子
秋田大学教育文化学部の林研究室の学生さん達がココアパウダーとコンデンスミルクで火山噴火の様子を再現していた。
5.地質情報展の感想
地質情報展は、秋田県の地質のすばらしさを地元の方々に知ってもらうとともに、郷土の地質を通して大地の多様さ、おもしろさ、有用性(地下資源など)、危険性(地震、地すべり、火山噴火などの自然災害)などの広範な地質現象に加えて、地球温暖化対策、金属のリサイクルなどについてもわかりやすく理解できるように様々な工夫がなされていた。
各ブースの標本などの展示物は見学者が手で触れることができ、スタッフが見学者に気さくに話しかけて展示物について説明されるなど随所に開催者の誠意が感じられた。おそらくは本展示会を見学した子供達の中から次代の地質学を担う逸材が輩出することと思われる。
本展示会は、子供からお年寄りまで楽しみながら学習できるように細やかな気配りがなされており、これを企画された地質調査総合センターの方々の熱意とご努力に脱帽した次第である。