協会誌「大地」No49

(株)ダイヤコンサルタント東北支社
五家 康宏/高坂 敏明

 

真空圧密工法における鉛直ドレーン打設深度に関する考察

1.はじめに

高含水比の泥炭を主体とする軟弱地盤上に道路盛土等を施工する場合、真空圧密工法は、沈下安定対策工として十分な対策効果を有していることが実証されてきている。ただし、中間砂層がある場合は、その層厚や透水係数によって、対策効果が減少することがいわれている。同様に改良を対象とする軟弱層の下位に分布する砂層の透水係数によっても、ドレーンの打設深度によっては真空圧が減少する可能性が予想される。

本報告では、弾・粘塑性有限要素法を用いたモデル計算によりドレーンの打設深度を変化させ、地盤への対策効果について検討を行うものである。

2.地盤条件および施工条件

検討は、図-1の土質断面図に示すように、表層から深度4mまでは、自然含水比Wn=600%、湿潤密度ρt=10〜11kN/m3の泥炭からなり、連続して自然含水比Wn=85%の軟質な粘性土が層厚6m程度で分布し、その下位に厚い細粒砂で構成される地盤で行った。改良対象は、この深度10mまでの軟弱層とした。

気密シート下の負圧は、90kN/m2とし、真空単独載荷期間を14日とした。その後、盛土厚さ6.0mを、速度15cm/dayで施工し、盛土放置期間を180日とした。

図

図-1 土質断面図

3.解析用パラメータ

解析は、飯塚、太田によって開発されたDACSAR を用いた。入力した土質パラメータを表-1 に示す。砂質土の透水係数は、k=1.0×10-5m/secとし、泥炭や粘性土の入力パラメータについては、物理試験、一軸圧縮試験および標準圧密試験によって得られた結果に基づいている。

改良深度については、鉛直ドレーン材の下端を排水層である砂質土まで定着させた場合〜排水層から上方1m、2m、3m、4m間で変化させた検討を行う。

表-1 解析入力パラメータ

土層 e A M D Ko k(m/s) y
盛土 - - - - 0.5 1.0E-06 19.0
サンドマット - - - - 0.5 1.0E-04 19.0
有機質土 11.3 0.90 1.97 0.081 0.3 7.0E-09 10.5
粘性土 1.9 0.90 1.48 0.055 0.5 8.0E-09 15..5
砂質土 - - - - 0.5 1.0E-05 19.0

4. 砂質土への影響

図-2は、ドレーン長と砂層に発生する負圧の関係を示したものである。ここで、非改良層厚h とはドレーン材と排水層の間隔である。同図によると、非改良層厚が小さいほど砂層に発生する負圧は、大きくなっている。盛土センターについて、h=0mとh=1mで比較すると、負圧の差は10kN/m2程度であり、h=1mとh=2mでは5kN/m2の負圧差がある。h=2m以降に発生する負圧の差は、3〜2kN/m2程度とh=0m,1mよりも変化は小さい。のり尻や盛土から離れた位置でも、非改良層厚の変化に伴う負圧差の量は小さくなるものの、同様な傾向を示している。

図

図-2 非改良層厚と砂層の負圧の関係

図-3,4は、砂層に発生する負圧が、周辺へ及ぼす影響を示したものである。図-3によると非改良層厚が小さいほど、かなり離れた範囲まで減圧が生じていることがわかる。また、図-4に示すように発生する負圧の大きさに伴い、周辺地盤の沈下量も大きくなっていることから、ドレーン下端を排水層へ近づけると周辺への影響が大きくなることがわかる。

図

図-3 砂層の過剰間隙水圧の分布

図

図-4 周辺地盤への影響(沈下)

5.改良ヤード内の挙動

図-5 にドレーン間の地盤へ作用する真空圧の深度分布図を示す。同図によると、盛土の安定に寄与する上層では、非改良層厚を小さくすると真空圧の効果が低下していることがわかる。また、非改良層厚2m程度から真空圧の減少は直線的な挙動へと変化しており、改良深度が浅いと、非改良部の負圧効果が低下する傾向を示す。

また、変位が最も発生しやすい泥炭と粘性土の境界付近に作用する真空圧と非改良層厚の関係を図-6に示す。ドレーン材の真空圧が、地盤へ伝達される効果も、非改良層厚が小さいほど伝わりにくく、非改良層厚が大きいほど地盤へ効果的に伝達されていることがわかる。

図

図-5 改良範囲内の過剰間隙水圧分布

図

図-6 改良範囲内の過剰間隙水圧と非改良層厚の関係

6.あとがき

今回はドレーンの打設深度の違いにより改良範囲内の対策効果への影響および周辺地盤への影響について検討を行った。非改良範囲を小さくすると、ドレーン打設範囲の真空効果が小さくなり、周辺地盤への影響が大きくなる。今回の検討では、改良範囲の対策効果、周辺への影響を考慮すると、概ね非改良範囲を2m程度が効果的である結果であった。ただし、ドレーンの打設深度は、地盤条件や改良目的( 沈下対策、安定対策や変形対策) に応じて設定する必要があり、今後は、種々の地盤条件および設計条件で検討を行い、合理的な改良深度の決定方法を考案していきたいと考えている。

引用・参考文献

  1. 山田満秀、高坂敏明、五十嵐勝、清見博英、林宏親:中間砂層を挟在する軟弱地盤における真空圧密工法の適用性について、地盤工学会第40回地盤工学研究発表会発表講演集、pp.1067-1068,2005.

目次へ戻る

Copyright(c)東北地質業協会