川崎地質(株)北日本支社太田 史朗/橿渕 俊樹 |
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川崎地質(株)技術本部 中山 健二 |
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1.はじめに
河川堤防を横断して設置される樋管のうち、直径1m以下のヒューム管で構築される「小口径樋管」は、設置時期が古く、50年以上を経過した施設も珍しくはない。
設置年度の古い樋管は、堤防嵩上げによる上載荷重増加に起因した耐力不足、管体の老朽化、地盤沈下などの現象とあいまって、下記のような種々の不具合が発生する。
これらは、堤防天端の通行や樋管周辺の堤防安全性確保に重大な悪影響を及ぼす恐れがあるため、変状の進展による破壊を回避するため適切な維持管理を行う必要がある。
写真-1 小口径樋管の破壊事例
本報告は、老朽化・劣化による機能低下の著しい小口径樋管の補修設計事例を踏まえ、補修設計・点検調査のポイントをまとめたものである。
2.小口径樋管の維持管理点検
日常管理(目視点検)で「堤防天端の沈下傾向」や「管体たわみ」が確認された場合は、詳細点検を実施し「管体や周辺堤防の健全性」を評価する。その上で、必要に応じて補修・補強方針を決定する(図-4 参照)
図-1 目視点検の概要図1)
図-2 自走式カメラ
図-3 詳細点検の概念図
図-4 小口径樋管の補修方針検討フローの一例3)
3.管体補修設計の留意点
人力作業が困難な小口径樋管の補修は、下水道補修向けに開発された「管渠更正工法」により実施する。更正工法は、止水や耐力向上などの目的や、管体の変状状況に応じて、最適な工法選定を行う(表-1、2参照)
更正管の施工では、次に示すような要因で施工不良や変状を引き起こす場合があり、補修設計に先立ち施行条件を十分に調査することが重要である。
表-1 各種更正工法の適用性4)5)
表-2 点検結果と適用判定基準5)
■反転、形成工法( <Φ 250mm の管径)
図-5 形成工法の概要図
■製管工法(既設管と一体化し補強効果大)
図-6 製管工法の概要図
4.空洞・ゆるみ補修設計の留意点
管体周辺の「空洞・ゆるみ」に対しては、応急対策としてグラウト工を行う。グラウト材は、経済性からCB(セメントベントナイト:懸濁型注入材) を用いることが多く、空洞に対しては十分な効果が得られる。
しかしながら、これを間隙率の小さい砂質土中の「ゆるみ」に適用した場合に、次のような問題が発生した事例がある。
写真-2 CBグラウト流入で、破損した更正材
以上の変状では、明確な空洞が認められない状態の地盤にCB 注入を施工したことが原因と考えられ、このような問題を回避するためには、経済性ではなく適用性を重視し浸透型の注入を適用することが必要である。
このように「ゆるみ」に対してグラウト工による補修を適用する場合は、地盤調査により「ゆるみや土質状態」の分布を詳細に把握し、土質特性に応じた適切な注入材を選定することが重要である。
なお、注入施工の際は、圧力管理を入念に行い、一定以上の圧力変動が生じた段階で、注入を終了させることが注入材料の選定以上に重要である。
図-7 注入材料の選定図6)
5.おわりに
公共インフラの維持補修に際しては、土・水・材料の挙動を的確に把握した上で、それらが構造物の機能低下に与えている影響を考慮した効果的な設計施工を行う必要がある。
今後、地盤調査技術が維持補修分野において、より一層活用されるべく、努力を継続したい。
引用・参考文献