平成19年度「若手技術者セミナー」は今年度で30回目を迎えました。今回は、「現場技術の伝承」を主題とした「特別企画:若手技術者セミナー」を計画し、初めての調査ボーリング現場の研修と恒例の若手技術者の意見交換・親睦の集いを行いました。
地質調査業界では、現場技術者の高齢化に伴い「団塊の世代」が培ってきた技術やノウハウの伝承が問題となっており、この「現場技術の伝承」を今回はセミナー主題としました。
この研修会では、現在地質調査業に携わっている方々の率直な意見・要望・疑問点を聞く機会をもって、技術者相互の向上と今後の協会活動の参考にすることを目的としました。
●場所:山形県村山市〜東根市内(国土交通省東北地方整備局山形河川国道事務所 道路建設現場)
●セミナーの内容
一日目:平成19年10月25日(木)午後
二日目:平成19年10月26日(金)午前
今回は「現場技術の伝承」を含めた特別企画と言うこともあり、以下のような構成で合計28人(内女性2人)の参加をいただきました。
研修出発前集合写真
(報告 神保)
以下に実施した研修の内容を簡単に記述します。
研修箇所は、道路建設に伴う切り土予定箇所で、現場の特徴は特車による運搬・傾斜地足場・立木などによる作業範囲の規制などであり、実際のコアリングや標準貫入試験等を実施してもらいました。当該会社の奥山ボーリングの担当者より説明後、主に次のような項目につて検討会を行った。
山間調査現場の研修
地区公民館の広場をお借りして、ダイヤコンサル・ベテランオペレータの千葉さんからビットやクラウン・コアチューブ・その他の各種ツールスを並べてもらい、各ツールの使用方法や特徴、その時の苦労話などの説明を受けました。
ボーリングツールスの説明
道路建設に伴う、水田地(農道)での軟弱土を対象とした調査ボーリングであり、次項目について主に説明がありました。
調査目的・業務の説明
(報告 内藤祥志委員)
“現場技術の伝承”を命題とした『現場研修』により多様な知識を身につけた若手技術者は、宿泊地である「碁点温泉」に戻り温泉で疲れを癒した後、食事を兼ねた『意見交流会』に参加しました。
『意見交流会』は、“神保部会長の挨拶”“池原技術委員長の挨拶”から始まり、お酒の量とともに徐々に打ち解けあい、初対面とは思えないほどの活発な交流がみられました。
池原技術委員長の挨拶
“自己紹介”では、若手技術者ならびにベテラン技術者それぞれから様々な意見が飛び出し、参加者の熱い気持ちが伝わる状況でした。その後の“グループディスカッションの班分け”では、立候補した座長2名(中臺さん、太田さん)の挨拶を受けて各人が希望するグループを選択しました。最後は、参加者全員の記念写真を撮影し、一次会が終了となりました。
一次会後の集合写真
まだまだ交流が足りないと感じた参加者は、別室での『二次会』へと参加した模様でした。そこでは、“仕事の話”“会社の話”“プライベートな話”等での盛り上がりがみられました。一部では、明日のディスカッションに通ずる話題で熱い議論となり、この業界への熱意が伝わる情景でした。
普段は接する機会が少ない他社技術者と本音で話ができた有意義な時間であったと思われます。
(報告 神保)
今回研修を実施した、東根〜村山地区の路線全般について地形と地質の概要をダイヤコンサルの佐藤委員から資料を元に説明を受けました。特に、厚い軟弱土の状況や形成年代についてが興味深い話題でありました。
地形・地質の説明
(報告 佐藤春夫委員)
第1班は、中臺座長のもと、土質調査の掘進技術とサンプリングを主題にサウンディング、サンプリング方法(砂礫のサンプリング)、掘削時の湧水の止め方、掘削が困難な地質、断面図の作成方法、現場管理等の幅広い討論、意見交換を行いました。
参加された技術者は、経験年数が2年から10年程度の現場管理、オペレーターとオブザーバーとして、技術の伝承者である経験年数30年以上オペレーターの幅広く、経験が浅い人は中堅技術者、伝承者の高い技術の習得と、中堅技術者は、伝承者のノウハウ(経験)を吸収出来たのではないかと思います。
各討論の内容は、若手の技術者が実務で抱える疑問や悩みとなることが多く上げられ、それに対して活発な議論、伝承者のアドバイスがなされましたが、特に今後の地質調査業に対して、若手技術者から業界のイメージアップを行う。伝承者からは、掘削機械のコンパクト化など今後の地質調査に対して皆さん真剣に考え、この仕事に誇りを持って取り組んでいることを実感した次第であります。
討論に参加された若手技術者の皆様は、他の参加者や伝承者の意見を聞くことで、今後の業務の参考になったかと思います。
今回参加された若手技術者の皆様が、今回のセミナーで行った研修・討論を機会に技術の向上と今後の糧となるように願っております。
第1班検討会
(報告 内藤祥志委員
第2班は、太田座長のもと「斜面防災部門」として意見交換・討議を開始しましたが、本年度は“ベテラン技術者”“中堅技術者”“経験年数1〜2年の若手技術者”“女性参加者”といった人員構成であったことから、多岐にわたる話題で活発な議論が繰りひろげられました。
話題は、“若手技術者”からの疑問質問に対して“ベテラン技術者”が実状を話すといった展開となりました。具体的な話題としては、「標準貫入試験の手動or半自動に関する留意点」「現場の安全管理」等が挙げられ、逆に“ベテラン技術者”からの要望としては、「正確な現場条件の把握」が提示されました。
最終的には、「現場に行く」「現場ならびに社内でのコミュニケーションが重要」「失敗したことを次に活かすことが重要」といった結果が導かれました。
また、“業界のイメージアップ”に関して話題となり、「労働環境の改善」「地元住民への貢献(ゴミ拾い等)」「地質調査業のネームバリューの向上(現場での看板設置等)」等の意見が出されました。女性からの意見として「服装・身だしなみの重要性」が出されたことも興味深い内容でした。
討議の割当て時間(約2時間)は瞬く間に過ぎ、最後に代表者が討議内容をまとめて発表し、終了となりました。
若手技術者が、“他社の異分野の若手技術者”“経験豊富なベテラン技術者”と接することは、将来に対して極めて貴重な経験となったと思われます。
第2班検討会
(報告: 本田仁宏委員)
今年度の研修テーマは「技術の伝承」を掲げて、
ベテランオペレータ → 若手オペレータ
ベテラン解析技術者 → 若手解析技術者
を目的として伝承側の人、伝承を受ける人が多く参加していただき、近年にない活発な研修であったと思います。
また、アンケート結果からも有意義な技術の伝承があったと考えられ、良い研修であったと思います。この若手セミナーは回を重ねて参加することで、技術力が向上し人脈も構築されると思っており、会員各社の方々にはこの点をご理解の上、若手社員をこのセミナーに今後とも参加させて頂きたく紙面を借りてお願い致します。
また、この「若手セミナー」に対するご意見や企画が有りましたら、協会にお寄せ下さるようお願い致します。
最後に、今回のセミナーの開催にあたり、全地連様からの助成、さらに国土交通省東北地方整備局山形河川国道事務所様、奥山ボーリング株式会社様、株式会社ダイヤコンサルタント様には多大なるご協力をいただき、ここに謝意を表します。