協会誌「大地」No48

なまはげがチカンしたらあかんやん

(株)ダイヤコンサルタント四国支社技術課 増田 哲史

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東北の地を離れ、はや4年の月日が経とうとしています。東北には3年の短い期間しかおりませんでしたが、この地で経験した事は今でも脳裏に焼き付いていてなかなか離れません。もともと西日本で生まれ育った自分にとって、特に雪山での出来事は驚きと学習の連続でした。西日本において雪に接する時と言えば、スキーに行った時ぐらいで「雪の怖さ」なんてものは、ぜんぜんわかりませんでした。今、考えてみると「『平成13年度若手技術者セミナー』に参加していなければ、こうして寄稿することがなかったかも」との考えが湧き起こります。と言うのも、以前寄稿させていただいた時にもちらっとは書いたのですが、若手セミナー後の懇親会で教えて頂いた雪山での自らの経験談が非常に役に立った(危険な目に遭わずに済んだ)からです。当然懇親会での何気ない話ではあるのですが、時には真面目に、時にはおもしろおかしく教えて頂いた情報が自分の心の片隅に鮮明なイメージとして残ったようです。

現在は四国にいるため、東北のように雪によって仕事をコントロールする必要はほとんどありません。だからといって、四国に雪が全く降らないわけではなく、年に2,3回冬将軍が居座る時にちらっとは降ります。通常、雪は根雪とならないので、仕事に影響が出てもほんの1、2日のことで済みます。さて四国で雪が10cmでも積もったら、どんなことになるでしょうか? 下の写真が示すように、山を通る国道なんかは大渋滞です。

「ここを越えたら・・・」てな考えで、みんなノーマルタイヤで無茶するから、結局越えられず、道路脇に放置しておくことになります。この放置車両が車両通行の邪魔となり大渋滞を引き起こす原因となります! 写真を撮影した時は、雪で高速道路が通行止めとなっていたため、たった10kmを通過するのに6時間もかかりました(みんなノーマルタイヤで無茶しすぎ!)。この大渋滞のおかげで技術支援会社(旧道路公団)からは、「天気予報で予測が付くのだから、前日に現地入りするように」。と、嫌みの一つも言われましたが、おかげさまで寄稿の素案を十分に考えることができました。

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2008年1月21日16時 桜三里にて撮影

仙台市と松山市の気候と日常生活の違いについて、ちょっと触れてみたいと思います。気温はだいたい5℃ぐらいの差があり、感覚的には松山空港にいる時はTシャツで良いと感じても、仙台空港では上に羽織る物が一枚あった方が良いと感じると思っていただいて結構です。

西日本において夏になると大活躍のエアコンですが、東北にいた3年間は、冷房で使用したことは一度もありませんでした。反対に暖房として良く使用したかと言うと、電気代が高いため、結局使うことはありませんでした。

次にお風呂の機能に追い炊き機能というものがありますが、西日本ではあまり使うことが無いので、自分は東北に来るまでそう言った便利な機能があることを知らずにいました。そしてこの機能の有用性は、最初の冬で示されました。西日本の平野部だとお風呂に張ったお湯が入浴中に冷たくなることはまずありません。だから、入浴中にお湯がみるみる間に冷たくなっていく様にびっくりしました。

ちょっと話題を変えて四国で担当している業務についてお話ししたいと思います。現在、国交省発注の水文調査とトンネル調査を担当させて頂いており、両者とも新直轄方式で、nexcoの厳しい技術指導の元、日々業務をこなしています。特にトンネル調査の業務においては、初めて行うようなことが多く(1、2年前に入社した新人では無いのですが・・・)、常に勉強(?)させられています。この業務の特徴を一言で言うと「立会が多い」でしょう。調査ボーリングの場合、概ね4回の立会を受けて立会者の了解を頂かないと掘削を開始することができないのです。まずは「地点立会」。これは日頃行うものなので納得できます。しかし、問題はこれからです。他の立会には「モノレール仮設完了立会」、「足場仮設完了立会」、「機械設置完了立会」があり、立会前には必ず現場管理者が「ボルトの締め忘れがないか? 緩んでいないか?」をチェックし、マジックで印を付けなければ立会を受けることもできないのです。本業務の場合、モノレール仮設を総延長約600mも行ったのでチェックに数日も掛かってしまい、報告書を書くまでに人件費を使ってしまいそうで怖いです。

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大神子海岸から見た初日の出(2008年 元旦)

ちょっと話題を変えて四国で担当している業務についてお話ししたいと思います。現在、国交省発注の水文調査とトンネル調査を担当させて頂いており、両者とも新直轄方式で、nexcoの厳しい技術指導の元、日々業務をこなしています。特にトンネル調査の業務においては、初めて行うようなことが多く(1、2年前に入社した新人では無いのですが・・・)、常に勉強(?)させられています。この業務の特徴を一言で言うと「立会が多い」でしょう。調査ボーリングの場合、概ね4回の立会を受けて立会者の了解を頂かないと掘削を開始することができないのです。まずは「地点立会」。これは日頃行うものなので納得できます。しかし、問題はこれからです。他の立会には「モノレール仮設完了立会」、「足場仮設完了立会」、「機械設置完了立会」があり、立会前には必ず現場管理者が「ボルトの締め忘れがないか? 緩んでいないか?」をチェックし、マジックで印を付けなければ立会を受けることもできないのです。本業務の場合、モノレール仮設を総延長約600mも行ったのでチェックに数日も掛かってしまい、報告書を書くまでに人件費を使ってしまいそうで怖いです。

この業務で経験した初めての事で一番印象に残った事と言えば、現場で初日の出を見たことです。年末から年度末にかけて、どんなに忙しくても元旦ぐらいは家で過ごせたものですが、さすがに今回だけは無理でした。なぜ元旦に現場にいなければならなかったのかは、技術支援会社から年末・年始の現場パトロールを要望されたことに始まります。現場が動いておらず、整理整頓してから現場を離れるわけですから、99%何も起こらない気はしますが、「現場で問題が100%発生しない」ことを保証することができない理由から現場パトロールを行うことにしました。現場パトロールを行うのは、社員でなくても良かったので、警備会社に依頼したのですが、元旦だけ人手が集まらなかったため、現場責任者である自分が現場パトロールをすることにしたのです。

生まれて初めて見た初日の出が、現場で見ることになるとは思いもよりませんでした。死ぬまでに見た初日の出がこの初日の出とならないよう、来年からは初日の出を見に行くよう心がけていきたいです。

それから初詣も現場で済ませました。現場パトロール自体は1時間程度で終わることから、午前のパトロールと午後のパトロールとの間の時間を使って、現場を一望できる場所に位置する神社へ現場の安全祈願、友達の安産祈願を兼ねて初詣に行ったのです。

最後に、題名について説明したいと思います。東北での思い出はたくさんありますが、「なまはげ」はその内の一つです。恐らく長男、長女にとっては今でも鮮烈なイメージとして残っているはずです。自分にとって「なまはげ」は、教科書から得た情報しかなく、一度は見てみたい物の一つでした(恐山にも行ってみたかったなぁ)。仕事が一段落つく5月頃、長男、長女のお仕置きを兼ねて「なまはげ」を見に行きました。当然のことながら効果は絶大で、「悪いことをしたらなまはげが連れ去りに来る。」と長男はついこないだまで信じ切っていました。だから、今年の1月中旬頃にニュースとなった「なまはげのチカン」は、国の重要無形民俗文化財である「なまはげ」の威厳を損なうどころか、「なまはげが性的悪戯をしに来るから早く寝なさい」と、子供たちに言わないといけなくなるので、絶対止めて頂きたい。

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