応用地質株式会社 技術本部 応用生態工学研究所 浅見 和弘 |
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弊社は、三春ダムの湖畔に応用生態工学研究所を設立し、ダム貯水池や大滝根川流域をフィールドにし、自社研究を行うとともに、社会貢献活動を行っています。
研究は、三春ダム湛水の前年平成7年10月より開始し、主な目的は、1.ダム湖出現に伴う生態系と微気象の長期変化の把握、2.生態学と土木工学との境界領域の開拓、3.流域の汚濁負荷の実態把握です。これまでに、風の変化、植生、外来魚、流域の水質などの研究成果を学会や毎年11月に開催する「さくら湖自然環境フォーラム」で発表しています。その他、自然観察会、地元の小学校の先生方を対象にした講習会などの講師も行っています
今回は、このうち、応用生態工学研究所が行っている地形・地質に関する社会貢献活動を紹介します。
応用生態工学研究所
常駐している職員
平成12年より8年連続で、地域の小中学生や住民の方などを対象に開催され、平成19年は11月22、23日、「三春ダム(さくら湖)ができて10年〜ダムとともに歩むまち〜」をテーマにして行いました。
発表者は、三春町立桜中学校生徒会、三春町立御木沢小学校、日本野鳥の会などで、私どもも「流域の学習ガイドブック−地形・地質編−」の紹介をしました。
このガイドブックでは、日本の生い立ち、大滝根川流域はどのような地質から成り立ち、その地質はどんな鉱物から出来ているのか、見分け方は?。あるいは、どこに行けば見ることができるかが紹介されています。
そして、流域の見所(ポイント)についても、由来やトピックスとともに紹介されています。
大滝根川流域ガイドブック
常駐している職員
平成18年の5月に、応用生態工学研究所のすぐ隣にある「さくら湖自然観察ステーション」において、福島県教育センターが開催した、福島県県中地域からいわき地域の小学校の先生を対象にした理科授業のための地質について、野外観察の講師を行いました。
授業内容は、先ず小学校の先生にとっては、あまり見慣れない地質図を見ていただきました。そして、自分たちの小学校がある周辺の地質や、その成り立ち、そしてステーションの裏の露頭(花崗岩の風化した露頭)を実際に見て、露頭や岩石をスケッチしていただき、その特徴について理解していただくという内容でレクチャーを行いました。特に、花崗岩でも新鮮なものと風化したものの違いや風化がなぜ起こるのかを先生方に考えていただきました。
屋内での説明:日本列島の地図を
野外での実習:ハンマーで石を割ってみる
分かっているつもりでいたことを、いざ説明しようとすると、難しい単語しか浮かばず、単純明快な言葉で説明することの難しさを再認識しました。
地学の分野は物理や化学と比べ受験科目にもなりにくく、高校では地学を教えない学校も多々ありますが、本来地学は自然と直接触れ合うことのできるダイナミックな学問であると思います。教える立場の先生方が地学は面白いと感じていただけることが、一番子供たちに「地学」あるいは「自然科学」は面白いという感覚が伝わっていくのではないかと思いました。
応用生態工学研究所は、故大矢社長が、それまで地質、土質、物理探査の技術者が中心になって作り上げてきた応用地質(株)が生態環境という新しい課題に取り組むには、職員を常駐させて職員自らが自主的に研究に取り組む独自の施設の必要性を強く訴えたことに始まります。三春は大矢が戦争末期過ごした地でもあり、地元三春町の伊藤町長(当時)も、ダム湖出現に伴う環境の変化を町民と一緒になって観察することを望まれ、双方の目的が合致し、研究所構想が実現化しました。
応用生態工学研究所は、現在、12年継続しておりますが、50年先を目指して、地に足をつけて研究や観測を行っていきたいと考えております。やがて、大化けするデータもでてくるのではないかと思っております。