(株)ダイヤコンサルタント佐藤 春夫・五十嵐 勝・高坂 敏明
高含水比の泥炭を主体とする軟弱地盤上に道路盛土を施工する場合、盛土の安定性、残留沈下等の問題から大規模な軟弱地盤対策工が必要となるケースが多い。近年、コスト縮減や工期短縮等から、強制的に地盤から排水させる真空圧密工法が採用されるケースが増えており、対策効果について非常に信頼性が高いことも確認されている。
本報告では、真空圧密工法とカードボードドレーン工法の長期沈下量を観測した結果をもとに、長期沈下量の低減効果について報告する。
図-1泥炭分布図1)
当該地区の地盤は、図-1に示すように、高含水比の泥炭と軟弱な粘性土が厚く堆積する泥炭性軟弱地盤であり、路線計画は高盛土で計画されている。
図-2土質断面図
対策工を実施した地盤構成は、図-2に示すように、上部から自然含水比Wn=500〜700%の泥炭層が、層厚3〜4m、有機質粘性土が層厚3m、中間砂層が深度7mから層厚4〜5m程度堆積し、下部に海成の粘土が層厚10m程度と厚く堆積する地盤である。
施工ヤードは、図-3に示すように
の3ヤード実施した。
図-3対策工配置図
対策工の配置は、真空圧密とドレーンの有効性の検証を目的に実施した。盛土速度は、時間的な制約からドレーンは、10cm/dで施工を行った。
施工盛土厚は、10.6mを基本とし、サーチャージ区間については、さらに1.2mを追加した計画とした。
また、真空圧密工法は、真空ポンプの影響を考慮し、施工時期を変えて行った。
盛土施工中の安定管理図を、図-4に示す。
ドレーンの盛土は、一次盛土として盛土厚6.5mまで施工し、3ヶ月放置後に二次盛土を実施している。
ドレーン、ドレーン+サーチャージ工法の安定管理図は、δ/Sが0.2〜0.3の範囲で推移し、安定した状態で盛土の施工が行われた。
真空圧密工法は、ポンプ単独運転期間中は、盛土側に引き込まれ、その後は、盛土荷重が作用することにより水田側に変位し、δ/Sが-0.2〜0の範囲で推移し、かなり安定した状態で盛土の施工が行われた。
図-4安定管理図
各工法の沈下経時変化図を、図-5.6に示す。真空圧密工は、盛土立上り時の沈下量St=3.5m、ポンプ停止時にSt=4.6m発生し、ポンプ停止後の沈下速度は、遅くなっている。
ドレーン工は、盛土立上り時にSt=2.6mの沈下が発生し、最終観測値は、St=4.5mとなっている。
図-5真空圧密工沈下量経時変化図
図-6カードボードドレーン工沈下量経時変化図
各工法の長期沈下量経時変化図と二次圧密係数εαを図-7に示す。式-1により算出した結果、εαの関係は、真空圧密<ドレーン+サーチャージ>ドレーンとなっており、真空載荷荷重が、長期沈下量の低減効果があることが確認された。
式─1
図-7長期沈下量経時変化図
次に、二次圧密係数εαと式-2の過圧密比OCRを算定し、図-8にプロットし整理した。真空圧密工法の二次圧密係数比Rは、R=0.5程度まで軽減することが可能となった。また、サーチャージΔH=1.2mを行った場合には、R=0.9〜0.8程度低減できる結果となった。
式─2
図-8過圧密比と長期沈下量の低減効果2)
真空圧密工法は、安定に対する効果は確認されていたが、今回の結果、泥炭地盤の長期沈下量に対しても有効であることが検証された。今後は、残留沈下の条件が厳しい構造物部、取り付け部の対策に有効であるものと考えられる。