協会誌「大地」No47

27.秋田の観光スポット

柴田工事調査(株) 林 克彦

秋田県の観光スポットを紹介する。秋田県には‘なまはげ’や‘竿灯’などのお祭りや男鹿半島、十和田湖、八幡平といった有名な景勝地が数多くある。相撲で言えば「横綱」級の観光地であり、わざわざでも観光に行く価値がある場所である。

今回は、知名度はそれ程でもなく、その土地の人しか知らない、いわば「前頭」か「幕内以下」程度の観光スポットを紹介したい。特に『大地』への投稿ということで大地にしっかりと根を下ろしたスポットを選んだ。

(1)こぶ杉

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読んで字の如く‘こぶ’のある杉である。‘こぶ杉’は秋田県でも数少ない村の一つとなった上小阿仁村内にある。この村は‘コアニチドリと秋田杉’を観光のキャッチフレーズにしている。コアニチドリは5mmぐらいの可憐な花であるが、ここにある秋田杉は樹齢が300年以上の巨大杉である。これらの杉が‘こぶ杉’の回りに林立している景色は圧巻である。

‘こぶ杉’自身は樹齢230年、幹回り3.7m(こぶ回り6.6m)、高さ40mでやや小ぶりである。

場所は秋田県のやや北部を通る国道285号沿いの大林地区の上大内沢にあり、国道から車で10分程度である。

(2)ゴジラ岩

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ゴジラの格好をした岩である。男鹿半島の南海岸には、地質屋なら聞いたことがある船川、女川、台島、門前といった漁港が東から西へ並んでいる。門前漁港の手前に塩瀬崎という岬があり、ここにゴジラが存在する。この付近は、岩石海岸でよく見られる奇岩や巨大岩があちこち見られ、ゴジラ岩もその一つである。当然のことながら一方向からしかこの姿は見られない。同じような岩はあちこちにあり、小さな案内板を見逃せば見つけることは至難である。観光客はあまりいないが、運がよければ、2,3人が集まって写真をとっていれば、そこがゴジラ岩である。

(3)デロ杉

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地元の人はデロ杉と呼ぶが、語源は泥杉(どろ杉)がなまったらしい。巨大な礫岩の上に杉や楢、ブナが十数本生えている。

礫岩は高さ6,7m。胴回りは30m程度。県道秋田八郎潟線の終点近く、五城目町の馬場目川の上流にある。地元ではこれから観光地化を目指しているらしい。まだ観光地ではないため、1ヶ月に1人訪れるかどうか程度であろう。地名度は低く、相撲でいえばまだ「新入幕」あるいは「入門前」といったところである。

デロ杉まで到達するには、五城目町で蛇喰(じゃばみ)地区はどこですかと尋ね、蛇喰地区に入ってから、部落の人にデロ杉の場所を尋ねるのが早い。この地区の隣の岩ノ又地区から林道に入り、舗装した道路を選んで進めば車で5分程度である。岩ノ又地区は茅葺屋根集落としても有名だ。

おわりに

前に述べたように、余り有名でないが、出張帰りに一服しながら眺めれば心を癒してくれるような場所で、なおかつ『大地』を意識して選んだ。

また、紙面の都合で、詳細な位置は省略した。その場所に行くには、近くまで行って聞いて貰った方が早い。今はどこの部落でも老齢化が進んでおり、民家にはだいたいお年寄りがいる。なまりはあるが東北人ならだいたいは通じるはずである。話し好きの人に当たれば、さらに面白いスポットを紹介してくれるかも知れない。出張帰りには、ぜひ立ち寄って'秋田'を楽しんで帰って貰いたい。

地質に興味がある方へ(追加)

(4)鉱業博物館(秋田大学付属)

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『大地』を読んでいる人には関心がある人も多いと思う。とにかく展示品が多い。1階から3階まであり、鉱物、岩石、化石、地球の歴史、火山、日本列島、黒鉱、資源、環境、調査機器・・等々。説明用のビデオ劇場もある。展示品が多く以外と時間を取ってしまう。定休日は原則月曜日のため注意。入場料は大人250円。場所は秋田大学の裏の山手側で分かりやすい。

(5)大仙市の貫入岩

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車を走らせていて、ひょっと横を見ると大きな'貫入岩'の露頭が現れてびっくりする。まるで貫入岩の教科書である。柱状節理の発達した溶岩部分、その回りは接触変質部、接触部内に捕獲岩が見られる。写真はその隣の露頭で貫入部分だけが板状に切り立っている部分である。その縁部を黒色の急冷ガラス層が取り巻き、周辺には火山角礫、軽石等の火山噴出物が堆積している。どうも火山の「火道」ではないかと思われるのだが。地質に興味のある人はぜひ立ち寄って見学して欲しい。実際にすぐ下まで近づくことが出来る。ただし観光地ではないので説明看板は立っていない。場所は国道105号を仙北市角館から大仙市大曲に向っていくと左側に道の駅なかせん'こめこめプラザ'がある。ここはT字路になっているので右側に折れて、道なりに車で10分足らずの距離にある。

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