(株)復建技術コンサルタント 佐藤 信宏・千葉 太介
宮城県石巻平野部において、これまで実施された既往調査データを収集・分析した結果、各定数間に相関性が認められた。また、これらの各相関性を利用して圧密沈下量計算に必要な地盤定数(ρt、e、Pc、Cc等)の推定および沈下量の試算を行い、他の手法との比較検討を実施した結果、含水比Wをパラメータとする圧密沈下量予測方法の可能性が示唆されたため報告する。
今回、対象とした地域は図-1に示す宮城県石巻平野部である。石巻平野は北上川の河口部に位置し、最終氷河期以降の海水準の上昇にともなうN値4程度の軟らかい沖積粘性土層が平均40m程度と厚く堆積している1)。
図-1宮城県石巻地方の概略図
今回収集した既往調査データ数は表-1に示すとおりである。
表-1収集データ数
地盤物性値間の相関性については各種文献等で既に示されているが、ここでは対象エリアによる特異性の把握を目的として、改めて各相関性について整理を行った。以下に代表的な関係を示す。
以上、対象エリアにおける各地盤物性値間の相関性にもとづく、含水比Wをパラメータとした各地盤定数の推定フローおよび沈下量計算Cc法の概念を図-2に示す。
図-2地盤定数値推定n流れおよびCc法
今回、含水比Wより推定された各地盤定数にもとづき圧密沈下量計算Cc法(図-2)および以下に示す他の手法との比較検討を実施した。検討結果の一例を図-3に示す。なお、図中の沈下量予測値S1、S2、S3 は以下のとおりである。
S1:圧密試験結果に基づく凾法の計 算結果
S2:軟弱地盤対策工指針3)による含水比別のe〜logP曲線に基づく凾 法の計算結果
S3:今回実施したCc法の計算結果
これより、同一荷重条件下における総沈下量ΣSおよび層別沈下量Siは三者とも比較的近い値を示し、概ねS3>S1>S2の関係が認められた。特にS2は載荷荷重の増大にともない、他と比較して小さい沈下量を示す傾向にある。
図-3沈下量検討結果図
地盤条件、盛土規模の異なる動態観測(地表面沈下計)による最終予測沈下量Sfp(双曲線法)と前述の沈下量予測値S1およびS3との比較検討を実施した(図-4)。これより、沈下量予測値の比S3/S1は、S3/S1≒1.2程度と比較的近い値を示し、実測値に対しては概ねSfp/S1≒0.9、Sfp/S3≒0.8程度の関係が得られた。今回得られたデータのみでの判断は難しいが、今後、更なるデータの収集・分析を進めることで、概略的な実測沈下量予測における検討資料となる可能性が考えられる。
表-2地盤モデル一覧
図-4実測沈下量Sfpと予測値(S1、S2)との比較
本論において、以下の事項が示唆された。
1)各地盤定数間の相関性を利用した含水比Wをパラメータとする圧密沈下量予測の当該地域への適用性。
2)既存データの収集・分析をとおしての統計的手法による実測沈下量の概略予測の可能性。
今回、石巻平野部と非常に限定された地域に対してではあるが、既存調査資料の収集・分析により圧密試験を経ずに物理特性により圧密沈下量の概略予測の可能性が示唆される結果が得られた。実際の圧密沈下挙動は地盤の不均一性・盛土規模・施工方法等、様々な要因が複雑に影響していると考えられる。そのため今回の結果のみから判断することは難しいが、事前に簡便な方法で地盤挙動の予測が可能となれば、地質調査の効率化・低献後は、堆積環境・地盤状況が異なる他地域においても、同様の傾向が認められるのか引き続き分析を進めていきたい。
《引用・参考文献》
1)伊藤ら:「北上川低地における沖積層の堆積環境および堆積年代について」第36回地盤工学研究発表会論文集、2001.6
2)渡辺他:軟弱地盤対策工時ポケットブック、1992.10
3)日本道路協会:道路土工軟弱地盤対策工指針、1986.11