協会誌「大地」No46

67.電気探査と1m深地温探査による地下水流動経路調査

日本地下水開発(株) 井上 純・遠藤 真哉

1.はじめに

ある湧水地において、湧水量減少の原因と対策を検討するために、湧水近傍において電気探査を実施した。湧水の形態や事前踏査の結果、湧水近傍では地下水は地表近くの極浅部を流動している可能性が高いと考えられたため、浅い領域の地下水分布を調査するのに有効である1m深地温探査を併用した。
比抵抗分布と1m深地温分布それぞれから推定された地下水の流動路は良い一致を示し、湧水から湧出している地下水の流動経路を捕捉できたと考えられる。

2.調査概要

図1に電気探査測線および1m深地温探査測点位置図を示す。
電気探査は2極法を採用し、電極間隔は0.8m、測定深度は20深度で16mである。解析は、有限要素法による2次元インバージョンを用いた。測線は図1に示したように、湧水地近傍を通るように2測線を設定している。測線1は86測点で68.8m、測点2は64測点で51.2mである。
1m深地温調査は、図1に示したように、湧水地周辺を5m間隔のメッシュ状に46測点を設定し、太さ30mmのステンレス棒を1m深まで打ち込み、サーミスタ温度計を孔底に差し込んで測定した。

3. 調査結果

図2に2次元解析比抵抗断面図、図3に1m深地温探査結果をそれぞれ示す。
比抵抗構造の特徴は、地表から1〜3mの深度にレンズ状の125〜150[Ω・m]の高比抵抗部が認められ、その形状から、この高比抵抗域が地下水の流動路であると見られる。湧水の電気伝導度が30〜35 mS/mであったことから、アーチーの式を用いて地下水流動路を構成する付近の地層の比抵抗値は125〜150[Ω・m]となり、両者はほぼ一致している。
1m深地温結果では、測点4、12、17、22、30、33、37が17℃以下の低温となっている。湧水地の底部の地温は15〜16℃を示していることから、上記の8測点直下に地下水流動経路が存在すると考えられる。
上記の高比抵抗部と1m深地温低温部の位置関係は調和的であり、6条の地下水流動路が認められた。

〈参考文献〉
物理探査ハンドブック手法編第5章電気探査、第11章熱・温度探査

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