協会誌「大地」No46

51.東北地方整備局・東北地質調査業協会意見交換会報告

昨年の9月27日(水)、国土交通省東北地方整備局との意見交換会が仙台市のハーネル仙台において2年ぶりに行われた。東北地方整備局側からは、山田篤司企画部長、三浦清志技術調整管理官、柴田久技術開発調整官、渥美雅裕河川調査官、冨樫篤英道路調査官(欠席)、瀧澤靖明技術管理課長補佐の6名が出席され、全地連・東北地質調査業協会側からは、藤城泰行全地連専務理事、奥山紘一東北地質調査業協会理事長、橋本良忠副理事長をはじめ各委員長や各県理事、広報委員会委員など14名が出席した。

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整備局側出席者

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山田企画部長挨拶

東北協会側から、あらかじめ提示した議題についての説明を行った後、整備局側から個別の議題についての回答があった。

意見交換会議題およびそれに対する整備局側の回答は以下の通りである。

議題1:公共工事の品質確保と地質調査技術の有効活用について

(1)コスト構造見直しに資するため、地質調査技術者の各段階(計画・設計・施工)への参画について
回答:社会資本整備を行う課程の中で、川上(地質調査、計画等)段階において広域および地域の地質、地形を勘案し、更に適切な地質調査後に計画・設計することが大きなコスト縮減に繋がることはいうまでもない。地質調査技術者の各段階の参画についてはダムの現場等において、工事段階・管理段階において地質業者から地質の専門家としての意見を伺っているところである。例えば、大規模な地すべり対策工事等においては十分な地質調査を行い、委員会で専門家の意見を伺いながら適切に工事を実施しているところであり、今後も各々の現場状況、難易度等を見ながら適切に対処していく。また、工事目的物の品質確保を図ることを目的に、工事の実施に際し、当該工事の施工業者、設計を担当したコンサルタント及び発注者の3者が参加して、設計意図や設計図書と現場の整合性を確認する「工事調整会議」を平成17年度から試行している。必要に応じて地質業者にも参加して頂く場合もあるかと思う。

(2)より効果的な地質調査を実施するための、契約後受託者提案制度の活用について
回答:業務に係わる受注者の変更提案は、現行約款において認められており、必要があると認めるときは履行期間又は業務委託料を変更できることは承知している。より効果的な地質調査を実施するため、優れた調査計画の提案をお願いする。

議題2:[公共工事の品質確保の促進に関する法律]と地質調査業務

(1)[品確法]に基づく[総合評価方式]の地質調査業務への適用について
回答:調査設計の総合評価方式については、調査設計の内容に照らし、技術的な工夫の余地があった橋梁詳細設計について昨年度1件試行している。今年度についても橋梁詳細設計1件を予定している。総合評価方式については現在、本省が財務省との包括協議に向け調整中であると聞いている。

(2)プロポーザル方式の今後の動向について
回答:技術力を評価して受注業者を特定するプロポーザル方式での受注拡大は、単なる価格競争でなく技術力の競争を図る面では望ましく、良質な設計成果につながるものと考えている。様々なプロポーザル方式の改訂を受け、東北地方整備局としても業務内容が技術的に高度なものや標準的な手法が定められていない業務等についてはプロポーザル方式を活用していく方針であり、今年度は昨年度以上を目標としている。8月末時点で対前年の約8割となっている状況である。地質調査業務において今年度のプロポーザル件数は、8月末において1件であるが、知識、構想力・応用力が必要とされる業務についてはプロポーザル方式で発注するよう指導しているところである。プロポーザル方式については技術力のみならず、価格も加味された方向に持って行くべきであると考えているが、価格を評価するプロポーザル方式については具体に話をできる状況にない。

議題3:地質調査業務における業者選定について

(1)業務内容に基づく適切な指名業者選定について
回答:業務の発注については、業務内容、規模等を勘案の上、決定している。今後も適正な業者選定に努めて参りたい。

(2)分離発注について
回答:同上。なお、これまでの契約書は「土木設計業務等請負契約書」、「測量調査等請負契約書」、「測量及び設計業務請負契約書」の3種類あったが、平成17年度末に「測量調査等請負契約書」が改訂されたことにあわせ「測量及び設計業務請負契約書」が廃止され「土木設計業務等請負契約書」「測量調査等請負契約書」の2種類に整理されたことからも、地質業務を含む測量調査業務と設計業務の分離発注に寄与するものと考えている。

議題4:災害応急対策支援について

回答:現在東北地方整備局においては、貴協会をはじめ13団体と災害時の応急復旧業務に関する協定を締結させて頂いているところであり、近年の活動実績としては以下の通りとなっている。
平成15年5月南三陸地震の緊急復旧工事(岩手河川国道事務所)要請した団体→岩手県建設業協会
平成17年7月梅雨前線豪雨の災害復旧工事(新庄河川事務所)要請した団体→東北建設協会連合会
平成16年9月北上川洪水の現地調査・測量・設計(岩手河川国道事務所)要請した団体→東北測量設計協会
地質業者は地質に関する専門家であり、災害時には活躍していただいているところであるが、今後、災害時における地質業者への要請について貴協会経由が望ましいということであればその方向で検討したい。

議題5:低価格入札の取り扱いについて

回答:平成16年12月から建設コンサルタント業務等における低価格による受注に関する調査を実施している。平成17年度の低価格受注は全体の7.3%に当たる62件、地質調査業務では6.8%に当たる5件が低価格での受注となっている。平成18年度8月末時点での低価格受注は全体の8.9%に当たる47件、地質調査業務では6.1%に当たる3件が低価格での受注となっており、全体では微増傾向、地質調査業務では減少傾向となっている。これまでの低受注調査の結果では指名機会を確保するための実績作りを理由とする企業も少なくなく、品質低下に及ぶ懸念もあることから、平成18年度から技術審査基準の業務の実績の評価期間を3ヶ年から5ヶ年に変更しているところである。財源が税金であることを踏まえると低価格での受注は悪とは言えないが、下請けへのしわ寄せ、成果品の品質確保、安全性の確保、業界の体力を考慮すると好ましいことではなく、危惧しているところである。

議題6:その他

その他として、全地連がコスト構造改革・コスト縮減につながる地質調査の有効利用ということで現在検討を進めている「地質に係わる事業リスク」について、全地連の藤城専務理事からの説明があった。
当協会にとっては、総合評価方式による発注等をはじめとする入札制度の改革の進展状況は極めて重要な関心事項であるので、広報委員会としては今年度も東北地方整備局との意見交換会を実施して行きたいと考えている。

尚、この意見交換会については、建設新聞、建設産業新聞、建設通信新聞の3紙の取材があり、翌日の紙面に掲載された。

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