日本応用地質学会東北支部代表幹事 国際航業株式会社 高見 智之 |
---|
日本応用地質学会東北支部では、毎年現地見学会を開催して、地形地質の現地観察や施工現場の見学により、実地で専門知識の習得と技術の研鑽に努めています。
今回の見学会は、今年度の活動方針の最終仕上げに相当する活動と位置づけられます。
今年度の活動の方針は、次のように定めています。(わかりやすく、具体的で、ちょっとわがままですが)
以上の方針のもとに、今年度の研究発表会や特別講演会などを開催してきました。
現地見学会の場所や方法については、無人島で地質踏査の実習や焚き火討論の案など、いろいろな意見が出ました。しかし、条件が多く、なかなか受け入れ先が見つかりませんでした。
そこで、今回は玉川ダムや松尾鉱山の環境施設を中心に、付近の特徴的な地形地質を見学しつつ、玉川ダム調査に初期から関わったベテランに語り部となっていただいて、苦労話(自慢話?)を聞き、若手と討論するという企画となりました。
玉川ダム、男神地すべり、玉川中和処理施設、米代川河床の田代層礫岩露頭、花輪東断層、旧松尾鉱山坑排水処理施設・行程
13日:仙台駅西口集合-田沢湖駅(秋田、盛岡からの参加者合流)-玉川ダム見学(昼食)-男神地すべり-玉川中和処理施設見学-玉川温泉・秋田焼山湿原経由-湯瀬温泉(泊)
14日:礫岩露頭観察-花輪東断層地形観察-八幡平アスピーテライン経由-松尾鉱山跡地(処理施設見学)-盛岡駅(合流組下車)-仙台駅(解散)
昭和46〜47年頃の予備調査から平成2年の竣工まで、様々な場面で関わった方が多いと思います。バスの中で、ベテランの語り部たちからの話を聞きながら、堤体の下の地質や貯水池周辺の地形地質を想像しました。大規模ダムでは初めてというRCD工法で施工され、断層や貯水池周辺地すべり、原石山品質管理などさまざまな課題を克服しての偉大な成果です。
ダム下流公園で調査当時を思い出して感慨にふける参加者
所長からの丁寧な説明に聞き入る(2005年8月)
玉川ダム管理所の所長から、ダム管理や地すべり監視の現状を説明していただきました。地すべりのメカニズムは?、範囲と深度は?、といった技術的な興味はつきません。
所長からの丁寧な説明に聞き入る(2005年8月)
玉川温泉源泉から湧出する強酸性水の中和処理の工程を見学しました。源泉での湧出状況から下流側の中和処理プラントの中の各工程について、詳細な説明を受けました。
玉川温泉の源泉(強酸性水の流量をチェック)
中和処理施設内(処理プロセスとリスク管理を見学)(2005年8月)
沈殿池での石灰投入作業
旅館脇の河床に露出する特異な礫岩層を観察しました。中古生代の基盤岩由来の角礫を主体とする地層は、第三紀の崖錐性の堆積物と考えられており、チャートや粘板岩、火山岩類などの多様な礫を含んでいます。礫種あてクイズでは、板状の礫?が岩脈なのか議論となりました。(所詮この程度です・・)
露頭を前に議論百出
活断層調査でトレンチが開いているかもしれないという情報があって、視察をもくろみましたが、まだ調査が進んでおらず、地形観察のみとなりました。
花輪盆地の地形を鳥瞰すべく、西側のスキー場斜面を猛スピードで登って東縁断層の地形を観察しました。
(見学会の下見で、30年前に活断層露頭を調査したという記憶をたどって露頭を探したそうですが、発見できなかったようです。)
花輪盆地を眺望できる尾根に登って変動地形や周囲の地形地質の説明
花輪盆地東縁断層を見渡せる高台までもくもくと登り続ける参加者
(先頭は橋本副支部長)(これでアルコールが抜けた・・)
八幡平アスピーテラインを通り、八幡平地すべりを見学したあと、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の処理施設を見学しました。バス移動中には村上氏(復建C)から、松尾鉱山の地質と歴史の説明がありました。
集中管理から分散管理へと変更された
制御システムの説明を受ける
松尾鉱山の強酸性水によって腐食した
コンクリートとパイプ
廃坑道からパイプで導水される坑内水
(約300mのトンネルを歩いて湧出口を見学)
沈殿池と、その後ろに見える八幡平地すべり
バスの中では、玉川ダムの調査に関わったベテランの方に語り部となっていただき、お話をいただきました。
バスの中では語り部による熱い語りのほか、イギリスのノッチンガムであったIAEGの参加報告(中里氏、今野氏、太田氏)、菅原捷氏からのダムにまつわる貴重なお話などがありました.(居眠りするまもなく、次から次へとよくしゃべるものだと感心?)
夜は「熊鍋」など晩飯を速攻で平らげたあと、旅館の庭にて焚き火ならぬ「炭火」を囲んで昼の議論の延長戦が繰り広げられました。寒さを忘れ、時間も忘れ、老い(?)も若きも何か夢中で語り合いました。(何を話したか詳細は定かではないが)
炭火を囲んで議論は過熱
天気に恵まれ、八幡平の素晴らしい紅葉と、はるかかなたの鳥海山、岩木山、早池峰山を眺めることができました。
他の学会の現地検討会と日程が一部重複したため、参加人数が懸念されましたが、秋田、盛岡からの参加者も多く、合計38名の参加者が集まりました。ご協力いただいた支部協賛会社の皆様に感謝します。
見学会資料は、幹事や語り部の方々の手作りで、見学箇所の案内やポイントなどがわかりやすくまとめられています。参加者がいなかった協賛会社には後日資料を配布しましたので、参考としてください。
なお、日本応用地質学会東北支部のホームページには、支部幹事の村上智昭氏(三本杉ジオテック)の参加報告がアップされていますので、そちらも併せてご覧ください。
来年は、悲願の焚き火討論で盛り上がるべく、ユニークな企画を検討中ですので、ご期待ください。行事案内は、支部内だけでなく全国にも情報発信する予定です。今回も他支部からの参加者がありました。また、今後他学会の東北支部との連携も模索します。広く技術交流の場を作って行きたいと考えています.ホンネの話、ここだけの話しなど、支部ならではのコミュニケーションは貴重です.これからも多くの参加者をお待ちしています。
アスピーテラインから望む岩手山とかなたに山頂が見える早池峰山