協会誌「大地」No45

東北地下工業(株) 大宮 哲彦

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16.みちのくだより青森

5月30日開催の弊社株主総会並びに役員会にて社長を仰せつかりました。この場を借りて皆様に改めてご報告いたします。なにぶん不安だらけの就任でありますが、皆様からのご支援や叱咤激励などを頂きながらこの重責をまっとうしていきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、前回弊社会長である阿部七郎がこのコーナーで青森の四季についてお話をいたしましたので、私からは、青森市の雪と水にまつわる話を少ししたいと思います。
私の住んでいる青森市は先日南郡浪岡町と合併し、人口30万人を超えました。

このような人口を有する都市で累積降雪量の年平均が770cm、最大積雪深の年平均が110cmにも達するところは見当たらず、国内外を通しても有数の豪雪地帯であり、県庁所在市で唯一特別豪雪地帯に指定されております。
青森市の冬と言えば雪との格闘です。
冬期には市民が早朝から毎日のように雪片づけを行っており、重労働を強いられております。

このような環境下で、少子高齢化に伴い、高齢者や身体障害者などの人口が約20%を超える状況にある青森市では、降雪時期における市民の安全で快適な歩行者空間の確保を目指して冬期バリアフリー計画として、歩道の除雪や融雪施設の整備などに取り組んでおります。特に、青森駅周辺や商店街、官公庁など主要な施設のある市内中心部の約120haを重点整備地区として歩道の融雪設備を整えているところであります。
歩道の融雪は、地熱を利用しているところもあり、我々の業界でも一部仕事となっております。

また、最近市内中心部ではマンション建設が相次いでおり、お年寄りを中心に郊外から移り住む傾向にあります。マンションは居住スペースはもちろんですが、医療や談話スペース、食料品店などを併設したものとなっており、すべてこの場所で用が足せるようになってきております。

このように、市民の生活に大きな影響を与えている雪ですが、一方で我々の生活には無くてはならない大変重要な資源の源となっています。それは水道水です。

青森市の南方に広く大きくそびえる日本100名山である標高1584mの八甲田大岳を主峰とする八甲田連峰には10月中旬より降雪があり、2月中旬から3月上旬にかけて最深積雪となります。雪は5月〜6月上旬まで残り、1年の2/3は雪で覆われています。ちなみに田茂萢岳麓の千人風呂の混浴で有名な酸ヶ湯温泉では最大で5mを超える積雪があります。

八甲田連峰に降り積もった雪は、春とともに溶けはじめ自然豊かな木々や腐葉土にろ過され地下に浸透し、長い年月をかけて地表へ湧水として流れ出し、一部が横内川に注ぎ出ます。
その横内川から水道水用として採水しているところが横内浄水場です。

青森市の横内浄水場の水道水は昭和59年、当時の渡部恒三厚生大臣、東京都水道局、それに雑誌「酒」の編集長、女優の大山のぶ代さんら16人で構成される厚生省(現厚生労働省)の「おいしい水研究会(座長、鈴木武夫国立公衆衛生院長)」で「おいしい」と答えた人が16人中10人と最も多く、日本一おいしい水と評価されました。これもこの豪雪があればこそだと思います。

しかし、横内川も森林伐採や観光開発等が起因し、降雨時には土砂流出による水質汚濁が問題となったこともありました。昭和54年、横内川集水区域内の水源保護を目的に、「横内川の水道水源を汚濁から守る指導要綱」を制定し、横内川の汚濁防止に努め、また、平成4年に青森市内のすべての水源保護区域に指導を拡大、適用するため「青森市水道水源保護指導要綱」を制定、平成14年には、「日本一おいしい水」を青森市民の宝物として守り、育んでいくため、「青森市横内川水道水源保護条例」を制定し、汚水等の排出行為を規制し、違反行為には罰則を科すこととしました。

さらに、市民がボランティアでブナ、ミズナラ等を植林・保護し、森林の持つ、水を貯える機能を向上させ、将来にわたり安定した水資源の確保や、水源汚濁防止、水害防止につながる「緑のダム」の整備に努めております。市民がボランティアで植林を行なうことは全国でも珍しいことであります。

このように、青森市の冬の雪は市民の日常生活に支障をきたすこともあれば、生きていく上において必要不可欠な水の供給源ともなっています。

山には思いっきり降ってもらい、平野部には降ってもらいたくないと思いますが、これも自然の摂理であり、我々市民は自然とうまく付き合っていかなければならないと思います。

皆様是非冬の青森もご覧いただければと思います。その時はどうぞ日本一おいしい青森の水、ミネラルウォーターよりおいしい青森の水で割る焼酎なんかも格別だと思います。

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