62.協会だより 第28 回若手技術者セミナー報告

技術委員会 研修部会 秋山 純一

 平成17年度の若手技術者セミナーは、平成18年1月26日と27日にわたり、仙台市秋保温泉ホテルニュー水戸屋で、25名 (内スタッフ7名)の参加を頂き開催されました。セミナーを年2回開催していた時期は、2回の内1回は秋保温泉を会場としていましたが、平成14年度以降年1回の開催となりましたので、今年は4年ぶりにホテルニュー水戸屋での開催となり、懐かしく思いました。当該セミナー記録を紐解きますと平成2 年度の第1回目の若手セミナーがこのホテルニュー水戸屋からスタートしました。テーマは「労働安全衛生の意識を高めるためには」でした。

  近年の若手セミナーは、二日にわたるセミナーの内、1日目はその年々のホットな話題をテーマに署名な講師を招いた講演や現場見学会を主として開催して来ました。今年度のセミナーは、「普段の業務で疑問に思っていることや知らないことが恥ずかしいなどの理由により聞けずにいることなどをザックバランに話し合う場」という原点に立ち帰ってみようという主旨で開催しました。従いまして、1日のセミナーは、当協会の技術委員の方々から普段の業務に関する身近な問題を話題提供という形で発表してもらい、参加者で討論するという形式にしました。

  今年度のセミナーのプログラムは次の通りです。

●一日目(1月26日:木曜日)13 :00〜深夜
1
)開会挨拶(研修部会長)
2)経験発表及び話題提供
 【1】「現場調査における調査計画と調査実施時の留意点」・・・内藤技術委員
 【2】「Web-GISの紹介と将来性について」・・・神保技術委員
 【3】「盛土の破壊事例に学ぶ地盤調査技術者」 ・・・佐藤技術委員
 【4】「地すべり調査(雑観)」 ・・・飛田技術委員
 【5】「現場管理・安全管理の留意点について」・・・本田技術委員
 【6】全体討論
3)意見交流会

●二日目(1月27日:金曜日)9:30 〜13:45
1)グループディスカッション
2)討議内容取りまとめ
3)グループ発表と全体討議
4)アンケート記入
5)技術委員長挨拶・・・ 盛土の破壊事例紹介 ・・・五十嵐委員長
6)閉会挨拶 (研修部会長)

1.経験発表および話題提供

 経験発表は、上記プログラムにあるように技術委員5 名から、それぞれ普段の業務を題材に、実際の調査事例などを交えながら、苦労話、問題となる事項、業務上の留意点などを発表していただきました。各発表の中で印象的なことを以下に要約します。

 【1】安定解析は計算そのもより、与える条件設定が重要である。c、φを逆算するのが一般的だが、
    逆算するときの地下水位の設定が不適切な場合が良くみられ、
    このために予想に反してすべるときがある。
 【2】盛土の安定計算では、粘性土の深度方 向の増加を考慮すると安全率が1.0を割り込む場合がある。
 【3】地すべり地のボーリング調査では不動地点の確認のための調査が重要で、
    特に冠頭部付近へのボーリングが必要である。寸足らずのボーリングにならないように、
    地形解析等で大きな地すべりが想定される場合は深いボーリングを提案し、深部の状況を確認する。
 【4】Web-GISは実はよく分からないが、便利で役に立ちそう。
 【5】ロープを引くように指示を受けた新人のC君がおもいっきり引っ張ったら、
    三脚が倒れ脚の1本がC君の頭部に当たった。そのC君は実は自分でした。

 話題提供後の討論会では、「すべり面の判定をコアですると言うが本当に可能か」、「実際にはどんな方法ですべり面の判定をやっているか」、「地すべり調査にN 値が必要か」、などが議論され、時間をオーバーして討論が交わされました。

2.意見交流会(報告 内藤祥志委員)

 「経験発表・話題提供」における活発な議論の後、参加者は温泉で疲れを癒し、食事を兼ねた“意見交流会”に参加しました。普段は会うことが少ない面々が、あちらこちらで活発に意見交流している模様が見受けられました。

 “五十嵐技術委員長の挨拶”から始まり、ほど良くお腹が満たされたころから“自己紹介”→“グループディスカッションの班分け”の流れとなりました。“自己紹介”では、皆さんが率直な意見・感想を述べたことにより、さらに親交が深まった感がありました。“班分け”は、座長2名の挨拶(勧誘)を受けて各人の意向を尊重して実施しましたが、概ねバランスの良い班構成となりました。

 最後は、ステージ上での集合写真を撮影しました。時間に限りがあり、まだまだ語り足りない参加者は、『二次会』→『三次会』と河岸をかえて語り明かしたとの噂が聞こえてきました。


意見交流会でのひとコマ


意見交流会最後の全体集合

3.二日目のグループディスカッション
1)第1班(一般調査部門) (報告 神保光昭委員)

 グループ討議の主題が、調査業務一般(特に平地・土質関係)と言うことで、土質の判断方法から、自然水位の考え方・ハザードマップ作成方法など多方面の幅広い討議内容となりました。

 参加された技術者も経験半年から10年以上の方まで幅広く、経験が浅い人は高い技術を習得し、経験が長い人は改めて基本的な項目を深く考えたように思いました。

 各討議においては、基本的技術から発注側との対応の仕方まで、この協会における業務全般についての話題が出ました。そのなかでは、参加各人の考えやそれに対する応答など、いろいろな意見が飛び交い活発な討議となる時間が多く、予定の時間が短く感じるほどでした。今回参加された若手の皆さんは、他の参加者の意見を聞くことで今後の業務において相当に参考になったかと思います。

 自分自身にとっても有意義なグループディスカッションであり、参加された方に感謝します。

 今回参加された若手の皆様が、今回の研修・討議を機会に技術の向上に邁進し、この業界が活気づけばと願っています。

2)2 日目の討論会第2班 (報告 飛田健二委員)

 第2班は、河戸座長のもと、「現場管理」「ボ−リング技術」「地すべり調査」等について、意見交換、討論を行いました。討論では、「現場管理」の重要な点として、他人の土地の無断立ち入りや搬入・仮設時の不用な伐採等はしないこと、掘削水の取水や排水にも十分気を配ること、現場の簡易トイレの設置を考えていくこと等が挙げられました。また、「ボ−リング技術」では、調査ボ−リングの一般的方法について話がなされ、中堅技術者からミストボ−リングの紹介がありました。「地すべり調査」に関しては多くの意見が出され、調査の留意点として、対岸から地すべり地全体の地形をよくみること、現場をよく歩いて亀裂の状況や崖の状況を把握すること、植生(たとえば竹林)にも留意して踏査することが重要ということが話し合われました。さらに、ボ−リングコア観察に際しては、長尺になるほど1 孔分のコアを並べて観察すること、隣接するコアも並べて全体をよくみること、必要に応じコアを割るなどして観察することで、すべり面に関する証拠をつかまえたらどうかとの意見がでました。


グループディスカッションの様子

4.参加者へのアンケート結果 (集計・グラフ化 本田仁宏委員)

 セミナー修了後に参加者より感想を書いて頂いたアンケート結果を図に示します。概ねこのセミナーの主旨が達成されているようです。当協会の予算が減少しているなか、この若手技術者セミナーの存続自体ゼロベースで考える時代になって来ていますが、今回のアンケート結果では、全員が存続して欲しいと言う意見ですので、心強く思っているところです。

回答数18





5.おわりに

 二日間の討論会・意見交流会を通して、発表者・参加者共に同じようことで普段苦労しており、また疑問に思っているということを改めて痛感しました。なかには、参加者の上司の話を聞き、「上司がこんなに熱い(仕事に情熱を持っている)人だったとは知らなかった。」という感想を述べてくれた人もいました。アンケート結果では、「継続して自分が参加したい」と「会社の同僚を参加させたい」が半々という回答が寄せられました。この若手セミナーは数回と回を重ねて参加することで、技術力も付き、人脈も構築されると思っていますので、会員各社の上司の方々にはこの点をご理解の上、社員をこのセミナーに今後とも参加させて頂きたく、紙面を借りてお願いします。また、今後のこの若手セミナーに対するご意見や企画がありましたら、協会にお寄せ下さるようお願いします。
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