代表幹事
  橋本 修一


 

37.日本応用地質学会 東北支部の最近の活動


 日本応用地質学会東北支部は、東北地質調査業協会の協賛をいただき、平成17年度の研究発表会、現地見学会、及びシンポジウムを開催したので報告する。

●研究発表会
日時:平成17年9月9日(金)10:00〜15:00
場所:仙台国際ホテル平成の間西ブース
概要:
  支部としては初の試みで、ポスター&ディスカッションセッションとした。すなわち、それぞれ短い口頭発表で発表の要旨をアピールし、その後ポスター展示の前でじっくりと議論を行い、最後に総合討論で締めくくるという方式とした。また全国地質調査業連合会技術発表会(e-フォーラム2005)と会期・会場を共にするとい、特例的な方法で行なった。発表件名は
  1. 大規模地震の余震についての一考察-宮城県沖地震(1978.6.12)を中心に-(三本杉ジオテック・村上、藤島)
  2. 三陸海岸周辺の道路災害形態と地形・地質的特徴(道路保全技術センター・阿部他3)
  3. 仙台市街地に出現した活断層露頭-段丘礫層の変形状況から解読される情報-(東北電・橋本他6)
  4. 仙台市青葉山段丘、低位段丘礫層を傾斜シフト4mで切る青葉東断層の新露頭(東北大・遅沢)
  5. AE から見たスマトラ地震のトルコ・テクハマム周辺地殻応力への影響(日大・田野、東海大・オメール・アイダン)
  6. 45度前後の断層面から発生する地震によるがけ崩れの特徴(川崎地質・正木)
  7. 仙台市の未固結地盤図と地震災害(日本技術士会東北支部・今野)
  8. 2003年7月26日宮城県北部の地震における緊急調査行動と今後の支部活動(応用地質・塚原)
  9. 2003年7月26日宮城県北部の地震による第三系切土斜面崩壊とその後の変化(東北電・橋本)
  10. 景観保全計画における応用地質学の役割-特別名勝松島仁王島の例-(復建技術コンサル・奈倉)
 このうち、9と10は翌日の見学会の巡検案内も兼ねた。

 発表会会場は十分な広さと高さがありパワーポイントのスクリーンは大きく、各ポスター展示は余裕があった。各ポスターの前では質疑が行われ、全体討論では活発な意見が出された。

一方、口頭発表時間を5分制限としたのはやや短すぎた感があったこと、発表者は同一セッションでの他の発表を聞けないこと、総合討論では質問が重複するなど、運用にもたつきが見られるなどの不具合も生じたので、今後の課題としたい。

●現地(現場)見学会
日時:平成17年9月1 日(土)
場所:女川原子力(発)、石巻、旭山、松島
参加者:38名(全地連と合同開催)
 前述のe-フォーラム2005と日程を合わせた関係もあり、本年度は特例的に全地連と合同開催とした。内容的には3年間続けてきた宮城県沖地震関連行事の一環としたが、全国各地からの参加者もあることから「宮城県の地質」をテーマに、最近の地震で斜面崩壊した宮城県北部の中生界及び新第三系の現況、第三系堆積岩からなる景勝地の景観保全状況を見学した。



 最初は女川原子力発電所・PRセンターにて、牡鹿半島の中・古生界の岩質、地質構造などが画像、岩盤サンプルなどを用いて紹介された(東北電・橋本)。参加者からは壮大なジュラ系の褶曲構造を生で見たいとの声もあったが、行程の都合上、場所の紹介にとどめられた。

 石巻・鹿妻では2003年5月の地震で生じた斜面災害(落石・崩壊)の概要、対策工の現況、当時の行政等の対応などが紹介された(ジオテクノ・中里)。旭山では、2003年7月の地震で崩壊した切土斜面の現況を、地震直後の状況と合わせて紹介があり(東北電・橋本)、いまなお残されている岩盤のせり出し状況などを見学した。

  最後に、松島湾にチャーター船を繰り出し、環境保全に応用地質学の立場から携わった事例が紹介された(復建・奈倉)。かつては「堀の深い顔立ち」と「怒り肩」から名づけられた仁王島も、いまでは風化侵食で顔は丸く、なで肩で首も細くなり、さらに海鵜の糞で汚れており、威厳がなくなっていた。首は補強のコンクリートで覆われていたがむち打ち症治療のギプスのようであり、痛々しくてまともに目を向けられない現状はまことに残念であった。

  

●宮城県沖に備えるシンポ(その3)
日時:平成17年11月11日(金)午後
場所:仙台シルバーセンター
参加者:80名(DIG 参加61名)

 宮城県沖地震防災関連の活動は今年度で3度目となり、一応の区切りとなる。これまでに蓄積した地震防災関連の知識レベルの統合を図り、より実用的な防災マップの作成に寄与できることを念頭において、気楽にDIG 「揺れ易さマップ」を実施した。一連の活動は学会本部も注目しており、今回が締めくくりの行事になることから井上大榮会長も視察に見えられての開催となった。



 DIG とはDisaster Imagination Game (災害図上訓練)のことで、防災関係者の間で最近注目されている手法である。当日は参加者をいくつかのグループに分けて透明シートに地図・地盤情報をどんどん重ね書きして地質情報を地域地震防災マップに反映し、「揺れやすさマップ」として活用できる可能性をゲーム感覚でイメージしてもらうというものである。

 具体的には、仙台市とその周辺の新旧地形図と地盤図、仙台市防災マップなど、一般に手に入る材料と道具を使い、8グループにわけて実施した。丘陵地・山地の地形と地盤から丘陵地の宅地造成地の問題を考える組と、平野部の微地形から揺れ易さや液状化の問題を考える組に分け、それぞれで、大地震がおきたらどうなるかを想像し、一番安全な帰宅ルートを決めた。

最後に、各グループの代表が発表し、優秀賞3グループに対して、井上会長から表彰と記念品の授与を行った。また、参加方全員に参加賞として防災グッズをプレゼントした。

以上の活動については、今後CD あるいはDVD にて一覧できるようにまとめることにしている。なお、学会支部の活動報告の詳細については、日本応用地質学会東北支部HP にてご覧ください。
URL :http://wwwsoc.nii.ac.jp/jseg/tohoku/


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