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May the Force be with me! 『スター・ウォーズ』シリーズがついに完成しましたね。全6話のうち後半3話を先に公開し、20年を置いて前半の3話を発表するという例のないスケールを持つこのシリーズ、監督ジョージ・ルーカスの名とともに映画界に不滅の記憶を残しました。 全体では第4話にあたる『スター・ウォーズ』が発表されたのは77年、僕は翌年の日本公開の時、1ケ月で19回も観てしまいました。帝国の巨大衛星「デス・スター」の表面のミゾに共和国軍の戦闘機が飛び込む瞬間、それまでの映画では体験したことがないジェットコースター感覚に、映画館全体が大きくどよめいたことが思い出されます。その後、コンピューターを使った映像技術革新の成果を取り入れたデジタル・リマスター版も観にいったので、20回以上も観たことになり、これはもちろん僕がひとつの映画を観に映画館に通った最多記録で、もう2度とこんなことはないわけですが、これはもう映画の善し悪しではなくいわゆる青春というヤツで、まあ青春の1ページを飾る映画のひとつが『スター・ウォーズ』というのは僕の世代にとって幸せなことだと思うわけです。 何よりの証拠に、新しい『スター・ウォーズ』が公開されるたびにペプシのペットボトルのキャップに『スター・ウォーズ』のフィギアがオマケにつきますが(こういうのを玩具といいますね)、深夜のスーパーにいってごらんなさい。中年のオッサンたちが真剣にオマケの袋を指先でイジリまくり、中身を探っている光景に出くわします。これを「キモイ」と蔑んではいけません、例えば彼らの狙いは母アミダラよりは娘のレイア、つまり旧キャラクターに青春の残滓を求めているんだから。え?僕はコーラのオマケのフィギアを集めるようなまねはしませんよ、絶対に。コークのルパン3世シリーズを別にすれば。それからペプシではチャーリーブラウンのハンドベルのシリーズを唯一の例外として。 さて最終作『エピソード3』には『シスの復讐』というサブタイトルが付けられています。そのため、封切時『ジェダイの復讐』と名付けられていた第3作(つまり第6話ってヤヤコシイね)はこのたび『ジェダイの帰還』という指輪物語風サブタイトルに改名されました。お陰でTV放映のタイトルなどは混乱してましたが、この辺を見てもシリーズの行く末を配給側も見通していなかったことが判ります。そういえば第1作(つまり第4話、クドいけど)は、封切時は単に『スター・ウォーズ』と呼ばれていましたが、いつの間にやら『新たなる希望』という大層なサブタイトルがつけられてしまいました。 もっとも第1作のヒットはルーカス自身もまったく信じていなかったそうで(?)、不入りを覚悟した彼は公開時ハワイに潜伏しており、偶然『未知との遭遇』を撮り終えてハワイ滞在中のスピルバーグと意気投合して一緒に練った企画が『インディ・ジョーンズ』シリーズ、と聞くと出来すぎた話のような気もしますが、『S・W』『I・J』の2大シリーズは映画史に残る大ヒットを記録するとともに、ハリソン・フォードという世紀末を代表するスターを生んだのです。 ルーカス、スピルバーグに代表される現代ハリウッドのエンタティメントに批判的な向きもあるでしょう。人間が描けていないという声もよく聞くし、言えていると思います。しかし徹底して「面白さ」を追求する姿勢には、本当に感心します。例えばTVから生まれ、続々編が公開された邦画『踊る大捜査線』シリーズ。でも、映画館で観る映画としてはどうかな?単なるエンタティメントではないかという批判は当然です。そうではなく、映画館で料金をとるに足りる、真剣なエンタティメントであるかどうかが問題です。 制作費のことを言っているのではありません。第一そういう面ではこの映画は邦画では恵まれている方でしょう。それ以前に基本的な部分が、仮にTVでは許されるとしても映画ではペケなのです。 例えば1昨年大ヒットした『レインボー・ブリッジを封鎖せよ!』、深津絵里の恩田刑事が負傷、手術するにあたり、織田裕二の青島刑事がTVを通して献血を呼びかけるシーン。医学的にも社会的にも、ありえないでしょうが。妙に細部にリアリティーを感じさせるのが『踊る』の魅力ではなかったのですか。脚本ひどすぎ。 多分、こんなことを言うのは大人げないのでしょう。しかし、TVの『踊る』や、織田クン、深ッチャンの大ファンであるからこそ、こういういい加減さが残念なのです。 TVでは許される、と書きましたが、もちろんTVを蔑視しているわけではなく、選択の幅が広く料金も無料もしくは月額で設定されるTVには色々な番組があってしかるべき、という意味です。 しかし!WOWOWで月曜夜に放映の始まった『コールド・ケース』を観てビックリ!脚本も演出も音楽も最高、役者もうまく、何より映像が抜群にカックよく、このまま映画館にかけても見劣りしない出来。前々からアメリカのTVドラマはよく出来ていたとはいえ、『北の国から』など和製にも名作がたくさんあり、どちらがいいということではないのですが、手を抜くことを知らない『コールド・ケース』を見ると、少なくとも最近の和製や韓流にいかに安直なドラマが多いか、考えさせられます。今後の視聴者の要求水準に影響しそうな、いやぜひ影響を与えて欲しいドラマです。 いったいどんな人が作っているの?と思ったら、何のことはない、ハリウッドの人気プロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーでした。売れセン狙いと言わば言え、売れセン狙いも徹底すれば感動を呼ぶのです。ルーカス、スピルバーグ、ブラッカイマーが恵まれた特別の人たちだとは思いません。彼らはそれぞれ、周囲から変人と思われていた無名の時代から、スピルバーグの制作会社が「ドリーム・ワークス」を名乗っていることに示される通り、夢の映像化のためにすべてを賭けて手を抜かない姿勢を貫いた結果、今日の立場を築いたのです。そういえば、森田芳光は資金があればCGを駆使したエンタティメントを撮ってみたい、と言っていました。誰か森田監督のスポンサーになってくれい。 (イラストレーション:古川幸恵) |
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