(株)テクノ長谷  上中 博之
29.みちのくだより宮城 定禅寺通りのケヤキ並木

 現在の定禅寺通りは、戦災復興事業で新たに整備された街路である。戦後の昭和21年11月の戦災復興院告示による戦災復興土地区画整備事業として計画施工され、街路の幅員は46m、中央部に巾12mの緑地帯と遊歩道が設けられている。

 ケヤキ並木の植栽は、景観の復旧を目的とし、昭和33年に実施された。並木の延長は、県庁前の勾当台公園と仙台市で最も古い西公園を結ぶ約700mで、緑地帯と両側の歩道に166本植栽された。

 ケヤキは、ニレ科ケヤキ属の落葉高木で、よく成長した株は、高さ25m、直径4m以上になる。日本で最大のケヤキは、山形県東根市東根小学校のケヤキで、幹の周囲は15.7m、樹高は26m、樹齢は1500年以上と言われ、国の特別天然記念物に指定されている。分布は、日本では北海道を除く本州、四国、九州で、日本の代表的な落葉広葉樹である。病虫害に強く、まっすぐに伸びる幹とその上方に広がる樹冠は、すっきりとした樹形をなし、寺社の参道や境内、庭、公園、街路などに利用されている。材は強く、狂いは少なく、木目は美しく、大径材が得やすいことから、器具、家具材、彫刻材、建築材などに用いられている。ケヤキの語源は尊く秀でた木と言う意味の「けやけき木」に由来し、古くはツキ「槻」と呼ばれていた。

 定禅寺通りのケヤキは植栽後50年を数え、現在は、杜の都仙台にふさわしい並木に成長している。四季折々に姿を変え、葉を落とした冬の樹形、一斉に芽吹く春の新緑、夏の濃い緑のトンネルと炎天下の木陰、秋の紅葉は季節感にあふれた景観を造る。中央緑地帯の遊歩道には、著名な芸術家による彫刻、ベンチ、噴水などが設けられ、ケヤキ並木とともに訪れる市民や観光客を出迎える。また、春は「青葉まつり」、夏は「動く七夕パレード」、秋は「定禅寺ストリートジャズフェスティバルin仙台」、冬は80万個のイルミネーションによる「光のページェント」などのイベント会場となり、多くの人たちで賑わう。

 昭和46年、「市木」を決める市民投票において、並木の美しさからケヤキが選考され「市木」に決定した。また、平成7年に、日本郵政公社において、定禅寺通りのケヤキ並木が「ふるさと切手版」に採用され、全国に紹介されている。

 東北は、世界自然遺産白神山地を擁する杜の多い自然環境に恵まれた地域である。現在、定禅寺通りのケヤキ並木は、杜の都仙台のシンボルとなっているが、杜の都東北のシンボルとして育って欲しいと願っている。


定禅寺通りのケヤキ並木(平成17年7月25日撮影)
定禅寺通りのケヤキ並木(平成17年7月25日撮影)
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