東邦技術(株)  谷藤 允英
25.みちのくだより秋田 大曲の花火へのいざない

 夏から秋にかけて日本各地で花火大会が開かれる。その数は2,500 箇所を越え、250 億円以上が夜空に一瞬の光として消えると言われている。

 「日本の花火で最初に観たのは1613 年に徳川家康である」というのが定説となっているが、それに先立つこと24 年「1589 年7 月7 日に伊達政宗が米沢の居城にて観た」という記録もある。政宗や家康が観たという花火は現代の花火とは大きく異なり、現在市販されている径3 p程の打ち上げ花火に似たようなものであったらしい。それに比べて昨今の花火は色彩、形態が大きく進歩するとともに、打ち上げにコンピューターと音楽が加わり、多様な花火が打ち上げられるようになってきた。現在、「全国花火競技大会」と称されるのは「大曲」と「土浦(茨城県)」の二つで、それぞれ通産大臣賞が与えられているが、「大曲」については「総理大臣賞、中小企業庁長官賞、文部科学大臣賞」が付与されており、地元では日本一の花火大会だと自賛している。

 日本各地には日本一と称している花火大会はほかにもある。規模と経費では大阪PL 教団芸術花火で、12 万発の花火があがる。日本一の大玉の花火は新潟県小千谷市の花火で、4 尺玉を打ち上げる。

 ただし、その成功率は7 〜8 割のようである。東北各地にも打ち上げ数が1 万〜2 万5 千発の規模の花火大会があり、それぞれお国自慢となっている。浅虫温泉、五所川原、青森、十和田湖、盛岡、北上、水沢、石巻、塩竈、松島、仙台、酒田、鶴岡赤川、山形、福島、小名浜、須賀川などで、全国的にみても大きな大会が多い。

 大曲の花火は花火技術、特に創造花火の技術が優れており、花火師がその真価を発揮する名誉ある大会という独自性のほか、海外での数々の打ち上げもあって、質、観客の規模からして日本一とされ、今年で79 回目となる。「創造花火」は大曲が発祥の地で、自由な発想と形態、色彩、リズム感、立体感の創造性が重視され、その斬新さが花火愛好家の絶賛を博している。このため、年齢層を問わず人気があり、毎年のように訪れる人が多いのもこの大会の特徴でもある。観覧者は年々増加し、昨年は70 万人を数えた。

 大会は打ち上げ筒の数を150 本以下に制限し、連射方式で2 分30 秒の時間内でアイディアと創造性、芸術性を競うものである。会場は昭和44 年の河川改修によって整備された雄物川の河川敷で、それまでの大会よりも大きく発展した。河川敷内観覧席収容人数は約36 万人で、そのうち有料観覧席(桟敷席)は9 万8 千人余りである。桟敷席は8 月1 日に発売されるが、早い人は4 日前、前日には約450 人が並び、発売約3 時間で売り切れるという盛況ぶりである。人口4 万人弱の町に70 万人の人が集中するため、臨時列車が新幹線上下16 本、在来線上下46 本が当日に運行される。また、駐車場を市内周辺に18,400台分確保したり、テント設営地3ha を確保するなどしているが、足りない状況である。

 大会の模様は毎年NHK の放映がされているが、今年はハイビジョンで当日(8 月27 日)午後7 時半から生中継される。

 「大曲の花火」のスケールと華やかさは筆舌に尽しがたいので、現地でぜひ一度ご覧下さい。

大曲の花火
大曲の花火
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