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このたび、協会の理事を辞任するにあたり「大地」の誌上をお借りして、お礼のごあいさつを申し上げます。 私事になりますが、本誌およびその前身の技術ニュースに「ハンマー10話」という拙文を、2度にわたって掲載していただいたこと、仕事はもとより協会の活動を通じて、多くの皆様方にお付き合いを頂いたことなどが、今更ながら懐かしく思い出されます。 エッセイは、古き良き時代のことが中心ですが、これからも「地質屋」としての心を大切にして行きたいと思っております。 協会は、智恵を出し合い、力をあわせる研鑽の場でもあります。 今年は全地連の技術e−フォーラムが仙台で開催されますが、多くの技術者が一堂に会し、技術的な問題や、研究の成果が発表されることと思います。 実り多い成果があがることを期待したいと思います。 私がこの東北に居を移し、社会基盤整備の仕事などに携わって、いつの間にか30年余りが経過しました。地質屋の仕事に従事した後は、経営者の立場を頂いておりますが、その間、東北地方の多くのダム、トンネルや地すべり、地下水調査などの仕事を通じて、発注者の方からはもとより、協会の皆様方からも多くのことを学ばせて頂きました。 東北は首都圏に近接し、広大な土地と美しい自然を有した地域です。まだ社会基盤の整備が十分でなく、地域間の交流が活発ではないというだけのことで、日本にとって必要性の低い地域ではありません。 しかし放っておくと、日本はメガロポリスと、その他の地域という2つに大きく分類され、東京、中部(名古屋)、近畿などに、さらに人口と資産が集中し、災害に弱い国になってしまいます。 これらの地域に大地震と津波が襲うまで、無防備な膨張を続けるわけには行きません。 災害に強い国土にするためには、多極分散型の国家が必要です。 その意味で、この東北地方の広大な土地が21世紀まで、ほとんど手つかずのままで残されていることは、わが国にとって大きな幸いといえます。必ず、この東北の大地が日本の将来に役立つ時代が来る、と確信するものです。 今は公共事業の削減が続き、「建設冬の時代」などと言われております。 これは事実ですが、これを当たり前と受け止めていては、業界が「茹で蛙」現象に陥ってしまいます。 わが国は昨年だけでも、多くの台風が上陸し、中越、博多沖と2つもの大地震が発生するなど、大きな被害を受けたことは記憶に新しいことです。脆弱な国土を、安全ですみ良い国に変えてゆく道は、まだまだ遠く、今後もやらなければならないことは、いくらでもあるはずです。 「公共工事の品質確保の推進に関する法案」(いわゆる品確法)が4月より施行され、公共事業が根本から変わります。 地方自治体は地元企業を育成・保護するという大儀名目から、この取組みには温度差が生じることは予想されますが、ゆっくりとした動きであっても、確実に価格競争から技術力を考慮した競争に移行することは確実です。 従来型仕事は確かに減っているかもしれません。しかしいつまでも受身で待っているのではなく、攻めの姿勢をとって、新しく作る気になればいくらでもあるものです。アイデアを動員して、新しい仕事を提案し、プロポーザルで受注ができる業界に脱皮すれば、将来は明るくひらけるものと思います。 今後なお一層のご厚誼を賜りますようお願い申し上げ、ご挨拶と致します。 |
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