(株)キタコン   佐藤 和昭

佐藤 和昭

23.みちのくだよ 青森 世界遺産「白神山地」への想い

 「世界遺産」とは、未来の世代に引き継いでいくべき人類共通の「宝物」のことで「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」に分類されると定義されています。

 2004年7月現在、世界遺産リストに登録された総数は788。日本には11箇所の世界遺産が登録されており、その一つが平成5年屋久島とともに日本で最初に登録された「白神山地」であります。

 青森県と秋田県の両県にまたがる広大なブナ林がおおう白神山地は、多積雪地に残された最後の原生自然といわれ、固有の高山植物や天然記念物のヤマネ、クマゲラ、イヌワシ等が成育する希少動物の棲みかでもあります。そのため入山規制も厳しく施かれています。

 一昨年貴重な世界遺産が折角目の前にあるのだから、一度その魅力に触れてみようと思い、白神山地自然探索ツアー(ガイド付きの約1時間コース)に参加しました。

 秋晴れのもと十数名のツアー一行は、有名な「暗門の滝」近くの「ブナ散策道」へ探索の第一歩を踏み出した。コースは遺産地帯のうち緩衝地域(入山規制等緩い)の一角にあり、遺産登録後に遺産植生を、一般の方々が親しみ、そして理解を深める一助になるようにとの趣旨で開放された、起伏の多い小径が続くコースであった。

 コース内には、数十種に及ぶであろうブナを主体とした広葉樹や山野の植物が観察でき、その樹幹や植物の近くに樹名や植物名が「名称板」で案内されていた。
 又、森は山菜の宝庫のようでもあった。

 小径は特に急坂ではなかったが、ガイドさん(60才代の山男?の方)がスタスタと山を登っていく後を、私は日頃の運動不足のせいで息をフーフーさせながら30分程度山を登り、比較的平らな場所で小休止した。そこは一面のブナ森の中に、きれいな沢水の清流が流れる場所であった。この水はブナの森が雨水を長い年月貯え、育み、ろ過してようやく浸出し、沢水となったもので、冷たく非常においしい正に「天然のミネラルウォーター」であった。この白神の森のにおい、清流の流れる音を含めたブナ林の雰囲気が、心を癒すようであり、これも世界遺産のゆえんの1つにも思えた。


 


 帰り道は登りと別のコースを森林浴しながら下りることになるが、道すがらガイドさんに「あなたのような山のベテランだと山で道に迷うことはないのでしょう」と尋ねると、答えは「いや、やはり奥に入ると迷うことがある」と言う。

 「その場合どうやって山を下りるのか」と重ねて聞くと、「前もって周辺の山並みの稜線を頭に入れておき、迷った時は、この稜線を確認しながら下りる」とのことであった。正に山に深い関わりを持つ人の山の知恵にうなずいたものである。

 尚、山登りは遠慮したいという方には、西目屋村役場近くの県道沿いにある「白神ビジターセンター」内のシアターにおいて、縦15m×横20mの巨大なスクリーン(映像と臨場感あふれる音響効果で、白神山地の四季折々の自然・動植物の生態、そして人々との関わりを情緒豊かに紹介しています)で映像が上映されていますのでご観覧をお薦めします。過日東京から来た知人がこの映像を見たところ、その迫力に「スバラシイ!」を連発していました。

 最後に、「世界遺産」でもヨーロッパに多い「文化遺産」の地域は、観光が一大産業となっており、また白神山地と同様の「自然遺産」であり、その代表格であるアメリカの「イエローストーン国立公園」は、アメリカ最大の公園であり、世界最初の国立公園である。雄大で美しい変化に富んだ国立公園は他に例がなく、また野生動物の宝庫であると共に、公園内の間欠泉などは観光客にとってたまらない魅力といわれており、自然と人々がうまく共存しているようである。(残念ながら私は行った事はない)

 当地の「白神山地」も世界遺産登録から十数年たった今日、遺産を守るための厳しい入山規制等だけでなく、世界遺産を大切に保護・管理しつつ、自然と人との調和を図り自然と大地から恵与された「宝物」を大いに観光や地場産業発展のために活かしていただきたいものと願う昨今である。
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