66.平成16年度「現場技術管理者セミナー」報告

技術委員会
1 .はじめに

 技術委員会(研修部会)では、地質調査技士資格検定試験の事前対策として、「オペレーターのための資格取得実践セミナー」を実施しており、すばらしい実績をあげてまいりました。平成15年度より、当該資格試験も部門制になり、今年度は、「現場調査部門」、「現場技術・管理部門」、「土壌・地下水汚染部門」と3部門となりました。この中で、「現場技術・管理部門」においては、これまでの口頭試験に代わり、業務経験や実践的設問に対する記述式問題が実施されることになりました。

 このような受験内容の変化に対応し、「オペレーターのための資格取得実践セミナー」と対をなす形で、記述式問題対策講座として「現場技術管理者セミナー」を新規に企画し、会員の皆様にご案内を致しました。ご案内したセミナーの内容は次のとおりです。

○一日目:
・記述式問題の必須問題(業務経験を記述する問題)の書き方、解答例、添削指導
・意見交換会(普段の業務についての不明点・相談など)

○二日目:
・記述式問題の選択問題についてグループディスカッションと解答例

○会場・会費: 秋保温泉、5,000 円


 新企画につき、張り切ってスタッフ一同準備をしておりましたが、調査業界のご時世のためか、受験者が記述式問題を難関と意識していないのか、申込者は2名という結果でした。従いまして、申込者には大変申し訳ありませんでしたが、当初の計画を断念し、経験論文の書き方と添削指導のみとさせていただき、6月14日と15日の二日にわたり実施される「事前講習会」の初日の午前中(9:30〜12:00)にハーネル仙台にてセミナーを実施しました。


2 .セミナー報告

 セミナーでは、先ず、業務経験の「記述の仕方」について、当研修部会で作成したテキストを配布して説明しました。このテキストの内容は次のようになっております。

【地質調査技士資格検定問題−記述式問題の対策(見出しより) 】
1 .問題のねらい
2 .記述式問題の出題形式
3 .必須問題対策
 3.1.過去の必須問題
 3.2.経験論文の記述方法
  1)経験業務の選定方法
  2)論文構成と文字数
  3)問題文の分析と答案の作成方針
 3.3.論文記述における留意点
 3.4.受験前の準備・学習方法

 その後、あらかじめ記述して頂いていた各位の解答文について、本人の意図を確かめながら添削指導を行いました。以下にその状況と感触を述べます。

1 )Aさんの場合

 記述の仕方の説明を聞いた時点で、あらかじめ書いた内容は、出題の意図と違っていることに本人が気づき、書き直す方針へと指導は転換しました。

 
あらかじめ書いてもらった論文の講評を要約すると、大きくは、次のような状態でした。

@あれもこれもと取り上げて書いており主張が見えない。
A題意に対して適切な解答となっていない。
Bあれもこれも書いたせいで、工夫した点と現時点における評価と反省で述べていることが矛盾しているものがある。

 そこで、先ずどういう現場だったのかを本人から詳しく伺いました。その上で、この業務の特徴・課題と工夫した点がどこなのかを本人と話しながら数件に整理しました。その中から、あれもこれも書くのではなく、テーマを一つに絞り込むように指導しました。

 整理したテーマについて、「このテーマとした場合はこう書く」という解答例の指針を説明したうえで、本人が何を一番この業務で書きたかったかをじっくり考えてもらうことにしました。そして、本人が希望すれば後日再度添削することにし、当日のセミナーは終了しました。

 再添削はあきらめたのかな?と思った矢先、試験の4日前に書き直した論文がAさんから送られてきました。今度は、格段に良くなっていました。ただし、「技術的特徴」→「課題」→「工夫した点」の流れ(ストーリーのつながり)があと少しという感じでしたので、特徴・課題・工夫が互いに関連していることが分かるように添削したものを返送し、参考にしてもらいました。

2 )Bさんの場合

 セミナー参加申込と同時に経験問題の原稿を提出してもらい、内容的には十分充実しておりましたが、主に次の点について添削を加えました。

・全体の構成について
 答案は600字とスペースが限られており、それに対して多くの内容を詰め込み過ぎていました。単純かつ明解にテーマを1題に限った方が良いと指導しました。

・創意工夫した点について
 技術的特徴で取り上げた1題について創意工夫した点を考える。
なぜその対策を選定したのか、明確かつ簡潔に理由を述べる必要がある。

・現時点における評価と反省点について
評価:選定した対策工は正当か?
反省:さらに良い対策工があったかも?
謙虚な反省と、将来の展望を述べる。


 添削指導の数日後に手直し原稿をメールしてもらい感想を返信しましたが、全体に相当良い答案に仕上がったと思います。後は本人がどのくらい試験当日まで暗記出来たか、答案800字にどのように対応したかですが? Bさんの合格を確信しています。


3 .今後のセミナーの展望

 今回の新企画は、新受験制度による「新形式の記述式問題に対する事前セミナー」という位置づけに、近年参加者が減っている「若手技術者セミナー」的要素を加えて企画したものですが、残念ながら企画倒れと言わざるを得ませんでした。

 今回添削を受けたお二方の試験の結果は、この報告を書いている時点では分かりませんが、お二方の感想によりますと、かなり参考になったようで、記述式の書き方について、目から鱗が落ちたような様子でした。この点では、最も重視した経験論文の書き方については非常に有意であったと思われます。

 試験制度が変わってからは、午後に実施される記述式問題が一定の基準に達しないと午前中の択一式試験問題がいくら高得点でも合格はできません。今年度で記述式問題が実施されて2年目、記述式での受験体験者も増加しましたので、今後この記述試験に対するセミナーの需要も増える可能性があるのではないかと思っているところです。この報告を読み、来年度も記述式問題に対するセミナーの開催を希望したい人がおりましたら、是非、東北地質調査業協会にご一報くださるようお願い致します。

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