27.大潟村干拓博物館
ー世紀の大事業を未来に伝えるー

1.大潟村存立の原点を伝える

 「日本で一番大きな湖は?」と聞かれたら「琵琶湖」とすぐ答えが出てきます。では、「2 番目は?」と聞かれたら・・・・。戦後、日本で2 番目に大きな湖が干拓され、肥沃な大地が生み出されました。その湖が「八郎潟」であり、新生の大地を生み出した事業が「国営八郎潟干拓事業」です。

 八郎潟の開発の計画は、安政の時代にさかのぼり、大正・昭和初期にも計画されたものの、様々な事情により実施まではいたりませんでした。しかし、戦後、「干拓してできた大地に、日本農業のモデルとなるような生産性および所得水準の高い農業経営を確立して、豊かで住みよい近代的な農村社会をつくる」ことを目的に、干拓事業が開始されました。

 その事業は、20 年におよぶ歳月と総事業費852 億の巨費を投じた世紀の大事業で、昭和52 年に完工し、17,229ha の大地が創世され、大潟村が誕生しました。

 今回、訪問した「大潟村干拓博物館」は、干拓の歴史を紹介・保存することに加え、地域の芸術文化の拠点となること、さらに都市と農村の交流・生涯学習の場となることを目的に、平成12 年4 月に開館し、今年3 月までに18 万人の来館者をむかえています。

 大潟村発祥の原点が記された博物館をご紹介します。
●豆知識(干拓と埋立て)●
 「干拓」とは、堤防を築き水をくみ出して、堤防内の土地を利用することです。これに対して、土砂を盛って土地を拡大することを「埋立て」と言います。
 
大潟村干拓博物館のアクセス&利用案内

■交通のご案内
●秋田空港から車で1 時間30 分
●JR 秋田駅下車、車で1 時間
●JR 奥羽本線八郎潟駅下車、車で20 分
●JR 男鹿船越駅下車、車で20 分
●五城目八郎潟IC から車で20 分
 
     
    大潟村干拓博物館
■利用施設/研修室・企画展示室・ワークルーム

■開館時間/3 〜11 月9 :00 〜17 :00 (入館は16 :30 分まで)

■開館時間/1 2 〜2 月9 :00 〜16 :30 (入館は16 :00 分まで)

■入館料/一般・大学生 300 円(250 円)
小・中・高校生 100 円(50 円)
※()内の数字は、15 名様以上の団体料金です。
※身体障害者手帳、療育手帳の所持者で、付添人が必要な場合はどちらも無料。

■利用料/企画展示室1 ・2 研修室
一日 3,000 円(9 :00 〜17 :00 )
半日1,500 円(9 :00 〜13 :00 、13 :00 〜17 :00 )

■休館日/4 〜9 月:毎月第2 ・第4 火曜日
10 〜3 月:毎週火曜日 年末年始(12/31 〜1/3 )
※火曜日が祝日の場合は翌日。
2 .博物館の訪問

博物館内は、@頭上の海面、A潟の記憶、B大地創世劇場、C新生の大地、D豊かなる大地、E大地との共生の大きく6 つのテーマゾーンに分かれ充実した内容となっています(図1 参照)。また企画展示室や研修室、さらにギャラリーが設けられています。
図1 大潟村干拓博物館管内
各テーマゾーンをご紹介します。

@頭上の海面

大潟村の大地は、八郎湖の湖底でした。このテーマゾーンでは、八郎潟の水深を実感することができます。(写真1 )ちなみに、博物館は、マイナス数十センチです。
写真1 頭上の海面
A潟の記憶

「潟の記憶」では、昔の八郎湖と現在の状況が比較できるように空中からの写真が展示され(写真2 )、特に、干拓直後の写真は貴重なものです。また、大潟村の歴史が「大潟村歴史絵巻」として紹介され、八郎潟の干拓事業の歴史、大潟村の発展のようすが貴重な映像と写真により展示されています(写真3 )。
    写真2 八郎湖の変化
写真3 大潟村歴史絵巻
B大地創世劇場

博物館を入って右手から心地よい音響が流れてきます。行ってみると、そこには大型3 面マルチスクリーンと床面からの映像により、大潟村の自然・農村環境などを見ることができます(写真4 )。対面には椅子席が設けられていますが、満席で熱心に来館者が見入っておられました。
写真4 大型3 面マルチスクリーン
C新生の大地

大地創世劇場の奥側には、天井にまで達するオブジェがあります。このオブジェでは、マイナスの海抜に住む人たちに欠かせない、「水循環調節」について学べます。特に、グラフィック映像とジオラマを用い、小学生にも理解しやすいように工夫されています。

また、このテーマゾーンの壁側には、「干拓のあらまし」「干拓の手順」「農地整備の手順」が模型により示され、写真と合わせてみることにより、どのように干拓事業が進められたか理解できます。

訪問したときご夫妻が2 人で見られていましたが、ご主人が熱心に奥さんに模型を使って説明されており、昔の干拓事業に関わっていたのだろうと思いました。当時の貴重な干拓工事・大型機械の様子なども見ることができます。
写真5 水循環調節の解説
D豊かなる大地

博物館の奥側には、リアリテイにあふれる人形が目に飛び込んできます。トラクターには「FORD 」の文字があり、作業を行なっている人の顔は真剣そのものです(写真6 )。

八郎潟は、秋田側と男鹿半島が砂州により繋がってできた潟湖です。干拓当時、湖底まで数m しかありませんでしたから、地質的には陸化(湿原化)する直前の湖であります。このため排水した後には、肥沃ですが軟弱地盤となるヘドロ土壌が厚く堆積しています。このヘドロ上に農地以外にも居住地や各種の構造物が建設されたため、土地利用にあたってはヘドロとの戦いであったことが伺われます。

このコーナーではこのようなヘドロ土壌との戦いが主に紹介されています。
写真6 当時の作業風景
E大地との共生

このコーナーでは、大潟村の豊かな歴史や、大潟村の人々の暮らし、芸術文化に関する情報が図書や資料により紹介されています。

コーナーの右手の棚には、ソーラーカーの模型が目につきます。大潟村ではソーラーカーレースが開催されてあり、玄関入り口の奥側には実際のソーラーカーも展示されていました。ソーラーカーはテレビで見たことがありましたが、初めて実物を見ることができました。

また、その横には環境創造型農業展示コーナーがあり、農薬を減らす農業の工夫、代かきをしない田植えなど環境に配慮した農業の取り組みが紹介されています。
写真7 大地との共生コーナー
3 .最後に

大潟村干拓博物館には、解説員の方がおられ、来館者へ展示解説や展示内容を説明してくれます。また、学芸員の方もおられ専門的な質問に対しても回答してくれます。

今回の訪問にあたっても、学芸員の方より様々な貴重なお話が伺えました。その際に感じたことですが、博物館では、干拓資料の展示・保管だけではなく、博物館としての教育活動に力を入れられていることが感じられました。自然観察会・科学実験などに加え、小学生・中学生向けの「総合的な学習のマニュアルー干拓の大地に学ぶー」を発行され、総合的な学習にも対応されています。

また、博物館には「大潟村案内ボランテイアの会」が発足して、博物館だけでなく大潟村を案内してくれます。ボランテイアの方々は、実際の入植者の方が中心で、昔の苦労話や生活状況など、各種の思い出を含めて紹介してくれるそうです。今年に入って20 件の依頼があり、総合学習や教育研修・一般の家族にまで対応してくれます。予約が必要ですが、1人の方に対しても断ることはないとのこと。今度、お近くにお寄りの際はご利用を・・・。

(訪問:広報委員会)
  ■お申し込み・お問い合わせ
大潟村ボランティアの会
〒010- 0445 秋田県南秋田郡大潟村字西5- 2
大潟村干拓博物館内
TEL.0185- 22- 4113 FAX.0185- 22- 4115
E- mail:museum@ogata.or.jp
http://www.ogata.or.jp/ac/museum/
●お1 人からお申し込みいただけます。
◎小グループ、ご家族連れ、大歓迎です。お気軽にお申し込みください。
◎ご希望の内容や都合に合わせて案内できます。
◎村内の移動は原則として申込者の車に私どもがのせていただき、村内を案内することになります。
◎車以外の交通手段でお越しの方はご相談ください。
◎博物館内や園場において、入植の動機や大潟村の営農など、様々な話題をお話することもできます。

●ご案内の時間及び料金
◎案内時間は原則として9 時から16 時30 分までです。
◎料金は無料です。
◎干拓博物館の開館時間及び休館日は次の通りです。
開館時間 3 〜11 月:9 時〜17 時(入館は16 時30 分まで) 12 〜2 月:9 時〜16 時30 分(入館は16 時まで)
休館日 毎月第2 ・第4 火曜日及び年末年始(12/31 〜1/3 )
 
謝辞:表紙・裏表紙・訪問シリーズには、貴重な写真を利用させて頂いております。写真の使用にあたりましては、東北地方農政局・大潟村教育委員会・大潟村干拓博物館にご協力頂きました。ここに深くお礼を申し上げます。
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