地質基礎工業(株)

菅野 昭夫

菅野 昭夫

65.みちのくだより福島 国宝白水阿弥陀堂の近くに住んで

 福島県いわき市は、県の南東端に位置し、南域は茨城県に隣接しています。県内では浜通地区として地勢・気候的に区分され、太平洋に面している為に寒暖の差が比較的少なく暖かい地域です。昨シーズンは自宅周辺には一度も降雪がありませんでした。

 地形は、花崗岩類の分布する阿武隈高地から東に徐々に比高を下げ、双葉断層を境して、中生代や新生代の堆積岩が分布する緩やかな丘陵地を経過して、狭い冲洪積低地を抱えて太平洋に連なっています。

 縁あって、1971年に福島からいわきに職を求めて移り住むようになり、現在、湯ノ岳(ゆのだけ)の麓、白水の里に住んでおります。

 白水には1952年に国宝に指定された、地域自慢の白水阿弥陀堂が存在します。この白水阿弥陀堂は、岩手平泉の藤原秀衡の娘徳姫が、いわきの豪族岩城則道に嫁し、則道の死後にその霊を弔う為に、1160年、生地である平泉の金色堂を模して建立したと言い伝えられています。正面三間・側面三間の方三間で、宝形造り、栩(とち)葺き屋根の素朴な優美で繊細な姿をしています。堂内部には、木造阿弥陀三尊(阿弥陀如来、観世音菩薩、勢至菩薩)と特國天・多聞天の二天が収められています。

 阿弥陀堂の在る、いわき市内郷白水町(うちごう・しらみず・まち)の白水は、岩手平泉の「泉」に由来〔白+水=泉〕があるとも伝えられています。

 この地に居住することになったのも、前世からの因縁、子孫にも引き継ぎたいと考え、子供たちは阿弥子、紗弥子、岳洋(阿弥陀、湯ノ岳、太平洋に因んで)と名付けました。

 私の生活習慣として週2 〜3度、早朝、阿弥陀堂の周辺をウォーキングすることとしています。時間で50 分程度、距離にして4km ほどですが、季節に応じて素晴らしい景観が楽しめます。今朝は周辺紅葉の真っ只中に薄く霜化粧して凛として佇む堂の姿が見られ、池には鴨が数多く飛来してきていました。

 三匹のマガモ(Anas piatyrhynchos )に餌付けすることに成功し、ガーコーと呼ぶと、寄って来て掌から餌をついばむほどになっています。餌はカッパエビセン、時には鴨と引張りっこをして楽しんでいます。3年前から池に周年居ついておりアヒル化したカモなのかもしれません。

 初夏には庭園に燦然と咲き誇る大輪の蓮花などが見られます。蓮は、これまた知る人ぞ知る、大賀蓮・古代蓮(Neiumbonucifera )、古代蓮の研究者、東京大学農学部教授大賀一郎氏が、1951年に弥生時代の泥質土層から採取した3粒の種から発芽開花に成功したものです。なんと2000年前の種子からの発芽成功であったとして、当時も学術的に大きな話題になった蓮です。古代蓮は早朝五時半頃までには開花し、午後三時頃までには閉じ、花の開閉は3日間(3回)繰り返し、4日目には花びらが散ります。何と自然は規則的で不思議なものでしょうか!

 近くには、常磐炭田発祥の地とされる弥勒沢があります。明治時代から昭和40年代にかけて、いわき地方の中心となった石炭産業、その石炭を弥勒沢で発見し、石炭の基礎を築いた片寄平蔵(かたよせへいぞう)の頌徳碑があります。

 みちのくの南端、いわきに是非足を運んでください。湯本温泉、スパリゾートハワイアンズなどの温泉につかりながら石炭化石館、アンモナイトセンター、弥勒沢炭砿資料館で古代史を学び国宝白水阿弥陀堂を参拝されてはいかがでしょうか。(2003.11.27 )


雄2 羽と雌1 羽カッパエビセンをついばむ

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