1.最上川の地形景観の特性
最上川の景観の特性として、その急流性があり、富士川や球磨川と並んで日本三急流とも呼ばれています。しかし、最上川は日本有数の大河であり、平野や盆地を涵養して豊かに流れる姿もまた、この川の代表的景観です。私が平成9
年に関東から山形に来たとき、用水に取られてやせ細った利根川下流に比べて、最上川は水量が豊かで美しい川だと、改めて感動しました。
一般に河川の景観としては、滝・峡谷・川辺があげられています。今回は、その代表として赤滝と白糸の滝、最上峡をご案内します。
○赤滝
赤滝は米沢市の南方、白布温泉の上流にある最上川の源流の一つで、西吾妻山(2035m)の北西斜面にあります。「若女平」と呼ばれる溶岩台地の末端から硬い火山岩の急崖を流れ落ちる瀑布で、雄大な山地景観の中の滝です。
紅葉の季節には多くの観光客が訪れる、名所となっています。
○白糸の滝
白糸の滝は最上川の中流部、最上峡谷の右岸にある名瀑で、最上川本流と支流の侵食力の差によって生じた、いわゆる懸垂合流(懸谷)で、本・支流の対象の妙があります。
○最上峡
最上峡は最上川の中流にあるV 字谷で、谷の高さは約320m、峡谷の長さは約15qです。
峡谷には両岸に山地の迫る最上峡タイプ(V)と、峡谷内に段丘などが発達し、流れが穿入曲流の形を取る難所タイプがありますが、最上峡は前者の典型です。峡谷の地質は新第三紀中新世の草薙累層の硬質ないし珪質泥岩です。地質構造は典型的な箱形褶曲で、中央部は水平で、特に「白糸の滝」の岩壁でこれを確認できます。
最上川船下りに乗船の際には、川の流れとともに、峡谷の地層にも関心を持って頂ければ幸いです。
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秋の赤滝遠景 |
最上川と白糸の滝 |
2.最上川の舟運
最上川の舟運は江戸時代から明治のはじめの頃まで、物資の集散を中心に栄えました。特に酒田の日和山を経て、大阪まで米を運んだことは有名です。
江戸期元禄二年、かの松尾芭蕉は「奥の細道」で、次のように記しています。
『最上川は陸奥より出でて、山形を水上とす。碁点、隼などといふ恐ろしき難所あり。板敷山の北を流れて、果ては酒田の海に入る。左右山覆ひ茂みの中に船をくだす。これに稲積みたるをや、稲船といふならし。
白糸の滝は青葉の隙々に落ちて、仙人堂、岸に臨みて立つ。水みなぎって舟危し
「五月雨を集めて早し最上川」
「暑き日を海に入れたり最上川」』
名文で、かつ簡潔です。
最上川の雄大な流れ
3.「五つ星」の水辺に最上川
国土交通省は、全国の主な230の河川の669箇所について、地域の住民約1万4千人あまりに参加してもらって、水辺の緑地や公園などを点検してもらった「川の通信簿」を発表しました(12/19付け朝日新聞社会面)。
記事によると河川敷の公園や水辺などを、「豊かな自然を感じるか?」「水はきれいか?」「散歩しやすいか?」「景観はいいか?」などの項目で点検、総合評価したものです。その結果、最高の「☆☆☆☆☆」評価となったのは次の5箇所にとどまり、約53
%が三つ星評価でした。
・最上川
長崎せせらぎ公園(山形県中山町)
寒河江水辺プラザ(山形県寒河江市)
・木曽川南派川
国営木曽三川公園(愛知県一宮市)
・杭瀬川
杭瀬川スポーツ公園(岐阜県大垣市)
・芦田川
河佐峡(広島県府中市)
全国669箇所を採点して、最上川流域で2カ所も最高の五つ星とされたのには、水辺公園の設計もさることながら、最上川の流路の景観が優れていることを示すものでしょう。
山形の母なる川「最上川」万歳!!
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