48.平成15 年度若手技術者セミナー (IN ZAO)報告

技術委員会 研修部会 秋山 純一



 毎年恒例となっております「若手技術者セミナー」の今年度は、基調講演に安彦宏人先生を迎え、総勢25 人の参加者で、9 月18日、19日の1泊2日に渡り、山形県山形市の蔵王温泉で開催されました。会場は温泉街にしてはモダンな感じの「グランシェラ蔵王」というホテルです。

 今年度の若手技術者セミナーは、基調となる講演、グループディスカッション(3班)、リラックスした場での意見交換会という3本立てになっています。それぞれについて各委員から報告します。

1.平成15年度若手技術者
  セミナープログラム

一日目(9月18日、木曜日)
(1)挨拶13:00〜13:05 技術委員会委員長 五十嵐 勝
(2)講演 13:05 〜14:45 「地質基準−地質調査成果の性能基準」 日本地下水開発株式会社
取締役技術本部長 安彦宏人
(3)グループディスカッション15:10〜16:10
(4)全体発表 16:20〜16:50
(5)懇親会 18:30〜20:30
(6)意見交換会 20:30〜24:00?

二日目(9月19日、金曜日)
(1)グループディスカッション9:00〜12:00
(2)全体討議・アンケート13:00〜1:00
(3)閉会挨拶 14:00〜14:05
研修部会長 秋山純一

2.参加者

(1)会員参加者:18名
 参加者の年齢は、22才〜42才、経験年数は1年〜20年となっており、バランスは良かったと思います。

参加者の構成
現場代理人等外業主体(試験計測含) 29%
報告書作成等内業主体 6%
外業内業の両方 65%

(2)スタッフ:以下の委員6名+講師1名
技術委員長 五十嵐 勝
研修部会長 秋山純一
研修副部会長 佐藤眞治
研修部会委員 神保光昭、佐藤春夫
検定部会委員 山谷 睦

3.講演

 基調となる講演は、「地質基準−地質調査成果の性能基準」と題して、地元山形市内にある日本地下水開発株式会社取締役技術本部長の安彦宏人先生より講演をいただきました。安彦先生は、当協会の技術委員会副委員長を務められた方です。講演の内容を要約しますと、以下のようなものでした。

 <1>「地質基準」とは、日本地質学会において、2000 年3 月に定められたもので、土木、環境対策などを目的とする諸プロジェクトに不可欠な調査について定め、その調査によって得られる地質学的成果の質を保証することを目的とする。本基準は、調査によって得られる地質学的理解の内容を規定する性能基準であり、目的を達成するための調査方法を規定するものではない。

 <2>本基準では形成過程を異にする地質体を区分し、その区分毎に調査基準を定める。地質体は、「自然地質体」と「人工地質体」に区分する。自然地質体は、「正常堆積物」、「沖積層」、「付加堆積物」、「火山及び火成岩」、「深成岩」、「変成岩」に区分する。
 このほか、全ての地質体に共通する地質特性である「断裂」、「重力移動」、「風化・変質」についても調査基準を定める。

 <3>調査基準は、それぞれの調査によって到達される地質学的理解の程度によって4 段階(A〜D )のランク付けを行う。国際学会の招待講演とされるような最先端の調査を「A:」、必要最低限の調査を「D:」とする。

 <4>地質基準は、各地質体ごとに、定義、調査の目的と概要、調査基準という項目で定められている。
 これに続き、各地質体毎に地質基準について講演をいただきました。調査基準の一例を示しますと次のようになっております。
 調査基準−[正常堆積物の同定]

A:形成過程を考慮した正常堆積物の同定
B:堆積相の同定と堆積年代の認定
C:堆積域(陸成、海成)の認定
D:構成粒子の起源・粒径による堆積物の分類とそれらの変動期間の認定

 以上地質基準についての講演のほか、最近のホットな話題として、「地中熱利用技術」について講演をいただきました。地中熱利用技術の一般的概要は、図1に示すようなもので、これらの技術についてのアメリカの事例を紹介頂いた上で、日本の事例を紹介頂きました。



図1 地中熱利用技術概要
図1 地中熱利用技術概要

4.グループディスカッション

4.1 一日目のグループディスカッション
(1)第1班(佐藤眞治)
 本グループは、講演の内容を踏襲しつつ、地質基準や地中熱の利用と言った内容から、地質調査に関連の深い地下水関連の内容について討論され、翌日のテーマとして地下水を取り上げるといった結論になる内容でした。

 ディスカッションは、始めメンバーの日ごろの業務内容についての紹介を行い、それについて全員で議論して行きました。メンバー構成は、建築ボーリングが多い方、井戸関係が多い方、地すべり関連の仕事が多い方等、様々な人でした。このような日ごろの業務内容の紹介のあと、それぞれの業務内容について、疑問点や改善の方法があるのかなど、調査の手法や考え方について、全員で話し合われました。

 (2)第2班(佐藤春夫)
 講演された地質基準に対する意見として、調査手法の選定、地質断面図の作成、土質定数の決定等があげられ、活発な意見交換が行われました。

 地中熱利用としてのヒートポンプは、環境問題、新エネルギー開発として注目される技術です。

(3)第3班(神保光昭)
 今回の講演は、この業界に携わる者すべてにおいて興味深い内容であったと思います。研修目的のグループ協議においては、日頃疑問に思っている土質調査・試験内容や業務全般について若手同士間で十分なディスカッションが行えたと思います。今回の内容は、セミナーに参加された若手技術者のスキルアップに多少なりとも貢献できたと思っております。セミナーの意義を考え、各人が会社に戻ってから技術力向上に前向き取り組んでもらえるものと期待します。

4.2 二日目グループディスカッション
(1)第1班(佐藤眞治)
テーマ:地下水一般
座長 佐藤拓二
 このグループは、「水」という地質調査において重要な項目となるテーマについて話し合う内容でした。ディスカッションは座長の進行で進められ、地下水に関わる調査技術について日ごろの疑問点や現地調査のノウハウなどについて、屈託のない話がなされました。調査技術については、ボーリング中の地下水位の判断の仕方から、設計地下水位の設定についてまでの話がされ、それについての報告の仕方等の議論になりました。また、地すべり対策に関する地下水の影響の話や、水質と対策工の維持管理問題まで、広い内容の議論となりました。

(2)第 班(佐藤春夫)
テーマ:土質定数の決め方
座長酒田昭彦
 実務で若手技術者が抱えている問題を取り上げ、それに対し意見交換並びに対策方法を話し合いました。
 土質定数は、「定量的な判断が可能であるが、判断する上で技術者の経験と考察が必要である。」とまとめました。

グループディスカッションの様子
グループディスカッションの様子

(3)第3班(神保光昭)
テーマ:地下水及び水位
座長 大宮英俊
 今回、若手セミナーに研修部会委員として参加させていただきました。2日間の研修を通して同じこの業界の若手達と色々な事を話し合い、考え合えたことは自分にとって有意義な時間であったと思います。
 ディスカッションの話題として上がった内容の中で印象深かった話題を2題。

 ・話題1.工事影響調査目的とした地下水観測業務における業務完了判定基準

 若手担当者は、工事完了後10 年間継続観測を行っているがいつまで継続すれば良いか疑問に思いながらも地下水観測業
務を遂行しているとのこと。現在は明確な既成の判定基準がないため、発注者に対して適切なプレゼンテーションを行えず疑問に思いながらも毎年観測を行っているとのことです。
 内容の詳細を聞き、グループ協議を行い考えましたが先輩技術者として適切な返答ができなかったように思います。

 ・話題2.電子納品について

 最近、電子納品の話題が多く、各社間あるいは各技術者間での取り組み姿勢に違いが見えるように思います。今後、電子納品の必要性は確実に発生するため、現場写真の管理方法やCAD の使い方など検討すべき点が多いと思いました。

5.参加者の感想

 今回のセミナー終了後に参加者を対象に行ったアンケート調査の結果から参加者の感想をいくつか紹介します。回答者数は17 名です。

(1)講演とディスカッションの内容について
・地すべり調査等今まで携わった事のない内容が議題にあがっていた為、聞いていても分からない反面、多分野に関する良い勉強になった。
 ・実際の苦労話などが聞く事が出来て非常にためになった。

(2)若手セミナーに対するご意見
・機会があればまた参加したい。
・現場見学もしくはビデオが見たい(同意見有)。
・土壌、地下水汚染調査の現場見学や、技術講習会を希望したい。
・コアチェック方法について、勉強するのも良いと思う。
・日ごろの疑問の解消、新しい知識や考え方に触れる事が出来た。
・経験が浅くても参加しやすく、参考になった。
・一日目に現場見学、二日目にディスカッションを行ったらどうか。
・参加人数がもう少し多いほうがいいと思う。


講演「地質基準」について ディスカッションについて

6.おわりに

 若手技術者セミナーは、平成2年からスタートし、多くの諸先輩技術委員・研修委員によって支えられ、指導されて継続されて来ました。近年、調査業界も景気低迷の影響を受けてか、この若手セミナーの参加者が激減しております。かつて毎年のように参加していた立場としての私の感想は、何回も回を重ねて参加することにより、より良い効果があったように思います。

 お酒をいただきながらリラックスした気分で、他社の技術者と意見を交換することで、人脈が増え、一つのテーマを議論することで他社の考え方を知り、深まる理解、新発見、そして解らないのは自分だけではないんだという安心感、反面、同じ年代でもずいぶん差があると実感したり、このセミナーの参加者は様々な刺激を受けて帰って行かれたことと思います。

 今後、益々有意義で魅力あるセミナーとすべく、内容や形態を考えて行きたいと思いますので、皆様からのご意見やご指導を是非お寄せ下さるようお願いします。

講演 「地質基準・地中熱利用」
講演 「地質基準・地中熱利用」
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