22.現場のプロに聞く(岩盤ボーリングの巻)
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長年のボーリング現場の中で印象に残っていることがあればお教えください。 ダム現場でのことですが、粘土層の分布・性状が問題となっていました。完全に粘土化してベチョベチョの感じで。これまでも近くのボーリングで採取が出来なかったようで、掘削時には、役所の方が20 人近くも立ち会われました。立ち会いの中、掘進を行ったのですが、コアチューブから出すとき“ドキドキ”でした。うまくコアチューブから粘土層が出てきたとき、安心しました。ケーシングを何段も組替るために、特大足場を作ったりした甲斐がありました。現場代理人から感謝され、清酒をもらいうれしかったことも覚えています。 その他にも難しかった現場はありますか? 以上も下の砂礫層を取ることが目的でした。それまでは凝灰岩が分布して、“ルンルン”気分で掘削できるのですが、砂礫層では、セメンテーションも効かず、ケーシングを何段にも分けて、最後まで追い込みました。特に、泥水の管理に最も苦労しました。試せるものを全部試し、当時出たてのものを利用したりしました。結局、砂礫を掘削するために、泥水管理を行う者が2 人も専属でつき、砂礫層をうまくとることが出来ました。この時泥水管理の重要性を再認識しました。役所の方々がコアを見てびっくりしていたのが印象に残っています。 現場作業で特に気をつけている点などありますか? 安全第一はもちろんですが、調査ボーリングにおいては、100%のコア採取に努めることだと思います。いつも心がけていることは、地中がどのようになっているかを考えることです。たとえば、破砕帯に直面したら、頭の中でありとあらゆることを考えます。破砕帯に対するイメージができれば、どのような工法・道具を選定するか、送水圧力・マシンの油圧のかけ方・回転数・ビットの選定など1 つ1 つ確認していきます。まあ、イメージが当たらない場合も多いのですが、そのときは、間違ったまま押し切らず、何度でも考え、やり直します。もう一つは、自分たちが掘ったコア資料は、料金をもらっている商品であると常に心がけています。そうすればおのずと慎重かつ丁寧な仕事ができると思っています。 現場でご一緒したときに、他のオペレーターの方が“参考になった”と言っていました。独自の工夫などあればお教えください。 他の業者さんの機械は、買われた時とあまり変わっていないようですが、うちの機械は、あっちこっちに溶接で様々なものがついています。いつだったか下取りに出したのですが、業者さんに嫌がられたことがあります。独自に作ったものの1 例ですが、メタルとインプリービットを合体させたものを作っています。水圧のかかる泥岩層などの掘削速度が速すぎてびっくりされたことがあります。また、セメンテーションの時のロッドにも工夫をしていて、ロッドに凹凸をつけています。孔内を再崩壊させることで、固める効果が大きくなります。現在は、機械の性能が良くなって楽になっていますが、やはり掘削機械の工夫は欠かせません。 現場管理の方々にひとこと 前の話ですが、現場管理の方が“この地点は岩盤で構成され、役所にもそう報告している”といった現場がありました。 しかし、ボーリングを掘って見ると、転石だらけで、コアも当然のごとく隙間だらけになります。そのとき“こんなコア役所に出せるか”と言われ、がっくりきました。掘っているものにとっては、20 〜30cm もコアチューブが“ポン”と落ちていったりして、空洞があることは直ぐにわかりますから。こちらもオペレーターの意地がありますから、“立坑でも掘って確認してくれ”と言いました。結局、あとで横坑をほったそうですが、やはり、転石だらけだったそうです。このときばかりは、もっとオペレーターを信用してくれればと思いました。やはり現場管理の人との信頼関係が大切だと思います。 “道具の工夫もみんなで考え、困難な現場も現場にいるみんなで乗り切ってきた”ことを強調され、“一人ではなくチームワークが大切”と、お話を聞いている間に何度も口にされていました。 幾多の困難な現場を乗り切ってこられた米倉さん。また、“出張が多い仕事で、家族の理解がなければ、ここまでやってこれなかった”とも。仕事の仲間・家族の理解に守られ、技術にも人間にも円熟味もまされた頃。これからも益々のご発展をお祈りします。お忙しいところ、貴重なお話を聞かせて頂きありがとうございました。 |
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