国土交通省 東北地方整備局

                           建設産業調整官 鈴木 弘夫

02.我が国の建設業の現状

 我が国の建設業界は今日、公共・民間とともに建設投資が大幅に縮小する中で、建設業者数と工事量のバランスが崩れ、経営の悪化、倒産・失業の大幅な増加という厳しい状況に直面しています。

 平成13年度の建設投資は約66.2兆円、平成14年度は政府部門の大幅な減少を受けてさらに減少し、約62.1兆円となる見通しです。これは、建設投資のピークであった平成4年度(84.0兆円)と比べると約26%の大幅な減少となっています。

 一方、建設業者数は平成4年3月末(約52万2千社)に比べると平成13年3月末で約58万6千社となっており、完全に「供給過剰」な状態にあります。この結果、建設業の過当競争が続いており、大手、中小を問わず利益率は軒並み低下して、経営環境は急速に悪化しています。このため、多くの企業では、資産の売却、人員の削減など経営の合理化に取り組まざるを得ない状況にあります。

 建設業の倒産も急増しており、平成2年で1,469件だったものが、平成13年では6,154件となっており、これは全倒産件数の3分の1に近い数字となっています。大手建設業者でも、昨年12月に青木建設が民事再生法の適用を申請、本年2月には佐藤工業が会社更生法の適用を申請するなど経営破綻が相次いだ他、巨額の債務を抱かえた三井建設、住友建設、フジタの3社が経営統合を発表するなど業界再編の新たな動きも出ています。

東北地方における建設業の現状

 東北地方における建設投資は、平成8年度の約7.1兆円をピークに減少傾向にあり、平成12年度は妬く5.8兆円となっています。また、公共事業も平成10年度約4.6兆円から平成12年度約3.4兆円に急速に減少しています。一方建設業者数は、平成8年3月末で約4万社だったものが、平成13年3月末では約4万3千社と増加しており、平成13年は全産業の倒産件数の約37%が建設業という状況になっています。

 東北地方は、全産業就業者に占める建設業就業者の比率が平成12年度で12.6%(約62万人)と全国一高く、雇用が建設業に依存した構造となっています。建設業の不振は、相次ぐ製造業の工場閉鎖とともに東北地方の雇用の悪化に拍車をかけています。

地方の建設業者の現状と課題

 地方に基盤をおく中小建設業者の経営は、公共投資が大幅に削減されている状況の中で、今日極めて厳しい状況に置かれています。今後も、国、地方ともに財政状況を考えると公共工事の拡大は期待できず、建設業者が供給過剰な状況の中で厳しい競争に直面することは避けられません。こうした状況は、公共工事、民間工事を問わずにダンピングによる無理な工事の受注、指し値などの下請けたたき等の弊害を招いてます。また、工事の丸投げ、技術者の専任義務違反、経営事項審査への完成工事高の水増し申請などの違法行為が増加しています。このような不良・不適格業者の横行は、優良な中小の建設業者の経営を圧迫するとともに、公共工事の質の低下につながり、ひいては社会資本のエンドユーザーである国民自身が被害を受けることになるのです。

 国土交通省としては、こうした事態を未然に防ぎ、技術と経営に優れた優良な企業が生き残れるような環境を整備しなければならないと考えています。また、同時に地域の中小建設業による企業連携、新事業分野の開拓と進出などの取り組みが必要であると考えています。

入札契約適正化法による不良・不適格業者の排除の徹底を

  公共工事については、その発注等を巡って贈収賄、談合など各種の事件が多発しており、こうした不祥事が公共工事自体への国民の信頼を損なっている状況にあります。このため、国、地方公共団体、公団等の発注者全体を通じて、入札・契約の適正化を図ることにより、公共工事に対する国民の信頼を確保し、併せて建設産業の健全な発達を図るために、「公共工事の入札及び契約の適正化に関する法律」(以下、「入札契約適正化法」という)が、平成13年4月から施工されました。

 同法は、公共工事の入札・契約の適正化を図るため、各発注者に対して、入札・契約に関する情報の公表、不正行為があった場合の通知、適正な施工の確保を義務づけるとともに、一括下請負(丸投げ)の全面禁止等を規定しています。また、法律と併せて、同年3月には「適正化指針」が閣議決定され、入札・契約をチェックする第三者機関の設置や工事施行の成績評定の活用等、各発注者が取り組むべき事項が定められました。

 さらに、一括下請負の禁止に違反した建設業者に対し、これまで指示処分としていたものを原則として営業停止処分とし、厳正に対処することとしました。また、建設業法の施行規定の改正が平成13年10月から施行され、公共工事に関する施行体制台帳に下請け契約金額を明記するなどの制度の充実が図られました。

 さらに平成14年度からは、地方整備局建政部の体制を充実させ、いわゆる「施工体制Gメン」による現場の施工体制チェックを行っていく方針であり、公共工事からの不良・不適格業者排除を積極的に実施していくこととしています。

公共工事への信頼回復のために

 入札契約適正化法の施工から1年が経過しましたが、残念ながら公共工事を巡る汚職事件、丸投げなど業法違反行為、さらにダンピング受注などは依然としてみられる状況にあります。建設業は、社会資本整備の担い手であると同時に、災害の際には先頭に立って迅速に対応するなど国民生活にとって重要な産業です。

 また、世界に誇る建設技術を発展させ、継承していき、同時に高齢化、情報化、都市化などの社会経済の急速な変化に対応したニーズへの対応を図っていく必要があります。そのためには、国、地方公共団体、公団等の発注者は、公共工事の発注に当たって、技術と経営に優れ、まじめでやる気のある企業を適切に選定し、こうした企業が地域の産業として発展していける環境を作る責務があるといえます。

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