協会誌「大地」No49

地質調査技士に合格して

(株)山形地質エンジニアリング打田 広

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1)願書受付

私は平成18 年から地質調査技士に挑戦し続け2回とも残念な結果に終わってしまいました。3回目の挑戦となる平成20年は「この願書を書くのも今年で終わりにするぞ!」と強い気持ちを持つ反面、「今年もまた・・・」と弱気な自分を抑え、複雑な思いを胸に抱きながら記入しました。

2)講習会

講習会には毎年参加しましたが、その理由は勉強するポイント等を教えてもらえるのもありますが、試験結果に点数が加算されるのが一番の理由でした。地質調査技士の合格率は概ね30〜40%程度と低く、合格ラインギリギリの点数だった場合に講習会の点数が生きるのではないかと思ったからです。

講習会の会場は、現場とは違い冷房が効きすごしやすく、特に午後の講義が始まるとまもなく睡魔に襲われたりしました。しかし、受験に向けて参考となる部分を逃さないように講師の方々の話を良く聞き、重要と思われる箇所はテキストにメモや蛍光ペンでラインを引きました。

3)受験勉強

私の二人の先輩も地質調査技士を受験し2回目で合格していたこともあり、最初は2回目で合格するだろうと安易な自分勝手な考えから、ほとんど勉強をしませんでした。勉強といえば一夜漬け程度で試験前日に「出題されるのはこの辺かなぁ〜」と思う個所を暗記しましたが、試験問題はそんなに甘くなく一夜漬け程度の勉強ではまったく出題されず・・・。

こんな感じで過去2回は不合格。今回で3回目の挑戦ということもあり、最後にしようと気持ちを入れ替えて必死に勉強することにしました。

勉強方法としてはボーリングポケットブック等の参考書を熟読する方法もあったのですが、過去問題を理解してからでも遅くはないと特に力を入れて過去問題をしました。過去問題は講習会で頂いたCDを用いての勉強をしました。しかし、すぐ飽きてしまい、小休止しようとインターネット(スポ−ツ、芸能等)を見るとそのままの画面になってしまい、勉強を集中してすることが出来ませんでした。そこで、パソコンから離れようと、過去問題を印刷してテキストとして製本にしました。A4サイズで普通に印刷すると膨大な量になるので4分の1に縮小印刷しました。文字が小さく若干見えにくいですがA4サイズの4分の1のサイズなので携帯するにも容易で、ちょっとした空き時間に勉強することもできました。

文章問題は、解答に蛍光ペンでアンダーラインを引いて勉強しました。ただ引いただけでは理解できないため、理解するまで声を出して読みました。理解できたらラインを引いていきます。この勉強方法で文章問題はなんとかなりました。

計算、数字の問題は、読むだけでは理解できなかったので、覚えるまでノートに何回も書きました。

4)試験日

過去問題等に類似した問題は、勉強した甲斐もあり比較的簡単に解くことができました。しかし、過去問題とは全く違った問題は、自分の知識や経験から振り絞って何とか解答はしたものの自信が持てませんでした。もっと、ボ−リングポケットブック等の参考書を熟読しておけば良かったと思いました。

5)合格発表

協会のホームページより確認しました。最初は信じられず「何かの間違いでないか?次に見た時消えていたらどうしよう!?」と思い何回も確認しました。次の日、合格通知が届き半信半疑から実感に変わりました。

6)最後に

本年度で合格することができたのは、講習会の講師の方々のアドバイスや日常業務での会社の先輩等のご指導のお陰であり、大変感謝しております。今後は、今回の試験で学んだ事や、参考図書として使用したボーリングポケットブック等をさらに活用することにより、更なる技術力の向上に努め、他の模範となる地質調査技士になりたいと思います。

新和設計(株)佐々木 敬

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私は、新和設計に入社して以来、地質調査関連の仕事に携わっています。この度、地質調査技士の「現場技術・管理部門」を受験し、合格することができました。私自身の体験が、今後受験される方々の参考になるとは思いませんが、とりあえず受験体験記として少し書かせていただきたいと思います。

私は、平成9年に入社した後、平成14年〜17年頃まで土壌・地下水汚染調査の業務を担当していた期間がありました。平成16年には地質調査技士の「土壌・地下水汚染部門」を受験し、合格しました。その後再び、構造物基礎や急傾斜地等の一般的な地質調査の業務を担当するようになり、今回「現場技術・管理部門」で受験することになりました。つまり、2部門目のチャレンジということになります。

受験するにあたって、会社の先輩方や同僚の反応はとてもクールでした。「1回(土壌・地下水汚染部門で)合格してんだろ?じゃ大丈夫でしょ。」「まさか落ちる訳ないよな〜?」というような会話ばかりが飛び出してきたのです。何だか、受験に失敗してはいけないような空気が私の周りに流れ始めました。

私は、少し焦りました。一般的な地質調査と土壌・地下水汚染調査って共通している部分もあるんですけど、調査する目的からして違うので、割と勝手が違う部分も多いんですよね。両方の現場に携わり、その違いを身をもって感じていた私は「いやぁ〜、そんな簡単にはいかないですよ〜。」なんて言ってはみたのですが、時すでに遅し。そんな私の一言はまるで無視され、周囲の楽勝ムードは強くなる一方でした。まさに、「合格して当たり前」みたいな雰囲気。

ヤバイ。私は、本気で焦り始めました。実は私、慎重な性格というか、超マイナス思考なのです。「今年落ちても、来年がんばればいいや」なんて悠長なことを考える余裕は、既にある筈もありません。この時、私の脳裏には「失踪」の二文字がよぎりましたが、本当に失踪するような度胸もない私は、合格を目指して(いや、まさかの不合格を回避するために)勉強を開始しました。とりあえず、過去問題を入手し、何度も繰り返し解くことから始めました。というか結果的には、ほとんどそれしかしませんでした。他に有効な勉強方法が思いつかなかった私は、血眼になってそれを繰り返すしかなかったのです。

「知らない人が俺のことを見たら、こいつアホじゃねぇのか?って思うだろうな。」なんて、自分でも思うくらい、時間を見つけてはひたすら過去問題を解き続けました。その結果、過去5,6年分の過去問題はほぼ完璧に解けるまでになっていました(単に覚えてしまっただけかもしれませんが)。

更に私は、万全を期すために東北地質調査業協会主催の事前講習会に参加しました。講習会用のテキストは、要点ばかりが詰まったやや厚いもので、普段の私であれば確実にスルーしたのですが、背に腹は代えられない私は、試験直前の3,4日間、じっくりと読ませていただきました。

そして、今回の受験で一番役に立ったのは、これまでの業務を通じて自分自身が経験してきたことでした。地質調査の業務は、現場状況や調査目的によって実施する調査内容が違いますし、解析手法にも様々なものがあります。これらの内容を、自分自身で的確に判断し、業務を円滑に進行し、遂行することが求められる訳です。実際、このような現場に携わって、苦労したり、悩んだりした事って、なんだかんだ言っても大抵は覚えているものですね。試験問題の大半は、この経験によって対応できていたような気がします。

こうして私は、試験勉強とこれまでの経験を糧にして、「不合格」という最悪の事態を免れる事ができました。

しかし、きっかけはともかく、今回の試験を通して私は、努力すればたまには報われることもあるのだという事を再認識できました(ホント、たまにですが)。私の人生が今後どんな方向に転がっていくのか、さっぱり見当もつきませんが、この「たまに」を信じて、何かしら努力だけは続けていきたいものです。

秋田ボーリング(株)桜田 光

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この度、大地を編集されているご担当者様より「合格体験記」執筆についての電話を頂いた時は思わず、「私の様な中年でなくとも、もっと若い方の方が相応しいのでは・・・」と返答しお断りするつもりでしたが、電話の向こうでは「そんな風におっしゃらずに、何でもイイですから是非書いてください」という言葉を頂き、拙い文章ながら寄稿させて頂く運びとなりました。

今回ようやく合格通知を頂いたのですが、ここに至るまで幾度となく仙台会場へ通った原因は良く分かっています。とりわけ「勉強しない」事が原因です。少し不謹慎で回りくどい言い訳の様ですが、「実務が勉強」と考えてやって来ました。

稀に同じ様な「勉強できない体質」症状で受験されてる方々も居るかと思いますが、日々の業務に集中し、サクラが咲く頃に忘れないように受験願書を書いていれば、必ずや合格できると思います・・・。

以降は「地質調査技士に合格して」感じた事や、関連した事などを徒然なるままに記しましたのでご了解頂きたく存じます。

<ITについて>

今日ではインターネットの普及により膨大な情報量のトラフィックが存在しており、旧来の様に本棚の前に立ち、何冊かの書籍を選定し、付箋だらけのページを捲らずとも、幾つかの単語を羅列し検索するだけで即座に望んだ情報が知り得る、といった機会が多くなりました。反面、誤ったものや間違ったものが堂々と掲示されているサイトも多々見受けられます。

何事にも言える事ですが、その事柄について自分なりに検証し、正誤・真偽を見極める判断力を身につける事が大事だと感じます。

<技術者について>

私たち地質調査業・建設コンサルタント業というのは信頼に基づいた職種であり、技術的にも人間的にも信頼しうる存在であって始めて「技術者」と呼ばれるのだと思います。私などはまだまだ「なんちゃって」の域に存在してるのだと思いますが・・・。

最近見た雑誌のコラムに、昭和の企業家が残した言葉が目に焼き付いてしまったので紹介します。

「やってみもせんで何をいっとるか一見ムリなものが、ああやってダメならこうやってというねばりの前に可能性をもちはじめてくるのである」

技術の限りない可能性を語っているのだと思いました。分野は異なりますが、その生涯のほとんどを技術屋として過ごした人らしい含蓄のある言葉だな〜と感動してしまいました。

<これから地質調査技士として>

地質調査技士を取得してふと思う事ですが、土木・建築・設計ほか様々な資格制度のカテゴリーに、「地質調査技士」というマイノリティーが存在します。最近の多方面に及ぶ業務発注形態から評価すると、地質調査技士・単一の資格だけでは、その優位性がやや薄らいできた感が否めません。だからこそ実際の業務においては「地質調査技士」ならではの評価や提言、文章表現をして行ければ、と考えています。

末筆とはなりましたが、これからも技術研鑽の場として、また様々なソリューションを発信し、発展し続ける東北地質調査業協会である事をお祈り申しあげます。

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