協会誌「大地」No46

東北地質調査業協会 理事長 奥山 紘一

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01.強く美しい“東北”づくりに貢献する地質調査業の果たす役割

新年明けましておめでとうございます。会員の皆様にはお健やかに丁亥(ひのと・い)年の新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。あわせて日頃協会運営及び諸般の事業活動に関しまして格別のご理解とご協力をいただき、厚く感謝と御礼を申し上げます。

昨今の日本経済は、永年に亘る構造的不況を脱し、緩やかながらも景気回復傾向にあるとか、いざなぎ景気を超えたとか言われておりますが、中央と地方、大企業と中小企業、或いは業種間の格差が拡大するなど、景況感に大きな開きがあるように感じられます。

激変する社会・経済情勢の中での財政構造改革の柱として、国では歳出全般にわたる見直しと歳出の抑制を断行、特に三位一体改革の2年目としての地方交付税の減少から、公共事業・公共投資の目減りは不可避であり、その水準は平成10年の約15兆円に比して、平成19年度財務省原案では20年振りに7兆円を割り込んだ6年連続のマイナスと試算され、公共事業抑制傾向は当分続くものと覚悟しなければなりません。

加えて、独占禁止法の運用強化と入札・契約制度の改革などにより、市場の価格競争の激化と低入札・ダンピング受注が横行するなど、本協会を取り巻く環境は従来にも増して厳しい状況に推移しております。このような状況のもとで、誠に残念ながら昨年来、市場からの退場と協会脱会を余儀なくされた会員企業が続出し、会員数もピーク時の102社(平成12年度)から70社を割り込む結果となり、本協会設立以来の危機的環境を打開するために、昨秋の臨時総会決議を踏まえて、今般、斜面防災対策技術協会東北支部と全国さく井協会東北支部との事務局統合による新しい事務局体制でのスタートを切ることに至った次第であります。

あわせて、理事会・委員会機能のスリム化・合理化を図りながら、本協会の将来を見据えた方向性のもとでの協会運営と事業活動の展開を模索しているところであります。

本協会は、昭和34年設立以来、技術力向上と人材育成、法令遵守と企業倫理の実践、技能の伝承と品質確保の徹底に努めながら、会員企業の経営基盤の安定化と地質調査業の地位向上を目指して協会活動を推進してまいりました。

戦後の著しい経済復興と建設投資に支えられ、社会資本整備のための公共事業や地球環境の創造と保全、自然災害に関するコンサルティング、土壌・地下水汚染調査業務などを通じて産業の活性化と地域社会の発展に貢献してきた地質調査業は、昭和52年地質調査業登録規定の告示・施行以来、国土交通省東北地方整備局との「災害応急対策業務に関する協定」の締結、「建設工事の品質確保の促進に関する法律」の制定などを経て、従来の上流部門における地盤情報・サービス提供の立場から、中流・下流部門までのすべてのプロセスに及ぶ「ジオ・パートナー」として、良質で効率的な社会資本整備事業に携わる専門業者としての責務と役割を果たして、今日までの歩みを重ねてまいりました。

現状のような厳しい市場環境の中で、今後とも公共事業の量的拡大は望めないとするならば、今日までに公共事業が、地方に、地域社会にどれほどの貢献と恩恵をもたらしてきたか、地方に住む人々にとって真に必要な公共事業とは何か、の総括と検証を試みる必要性を感じます。

私たちは、広大な地域と豊かな自然環境、伝統と個性ある歴史・文化に育まれた“強く、美しい東北”づくりの担い手として、それぞれの会員企業の所属する各県・各地域の実情とニーズに応えられる《地元でできる》の考え方の最良の選択を発注当局にアピールし、地元企業ご活用のインセンティブを高める努力を重ねるべきであります。

《命》という字で代表された昨年から、明けて平成19年は、波乱万丈の「二黒土星」の年であります。この星回りの年は、過去にはキューバ危機、ドル・ショック、イラン・イラク戦争、沖縄返還、ベルリンの壁崩壊、天安門事件や各地で頻発した集中豪雨・地震などによる大事件・大災害が発生したように、大波乱・大変動が勃発し易い年と言われております。一方では、植物が大地の旺盛な生命力を吸い上げて繁茂する飛躍発展の年、幸運をつかみとれる絶好の機会の年とも言われております。最良か最悪かに大きく転ぶこの一年間が、本協会に、或いは会員企業の皆様にとりまして、明るく希望に満ちた最良の年になりますことをご祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

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