東北地質調査業協会 理事長

奥山 紘一
01.ごあいさつ
  ふるさと東北の安全・安心のために地質調査業の果たす役割

 新年明けましておめでとうございます。皆様にはお健やかに丙戌(ひのえいぬ)年の新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。あわせて日頃、本会運営と諸般の事業活動に関しまして、格別のご理解とご協力を賜り、厚く感謝と御礼を申し上げます。

 又、昨年9月8 〜9日の「全地連“技術e- フォーラム2005 ”仙台」は、本会を主管として開催されましたが、全国各地で地震や台風、集中豪雨などによる自然災害が相次ぐ中、「“災害に備える!”地質調査業の役割」をメインテーマにした技術発表会、シンポジウム、展示会などを通じて、地質調査業の役割を再確認できた場となりましたことは、誠に意義深く、本フォーラムの成功を会員の皆様とともに喜びを分かち合いたいものであります。

 特に、伊藤和明講師の特別講演「必ずくる大地震」と森永教夫東北整備局長の来賓祝辞の中で、21世紀は災害多発時代とも言われるほど異常気象が多発し、大型台風や大地震による様々なパターンの災害が発生しやすい状況にあり、東北地方にとって大きな課題である。これからは自分たちが住む地域での災害環境を把握と防災教育と地域活動の重要性を認識し、防災・減災対策をたてることが大切である。本会が担っている業務の成果と役割に期待したい、とのメッセージは、本会及び会員各社への新たな可能性への挑戦を示唆されたものだと思います。

 昨今の日本経済、或いは建設業界の景気動向は、ようやく永い構造的不況から脱し、民間設備投資に明るさが見え始めているものの、地方に居住する者、とりわけ建設関連業に従事する者にとってはその実感は薄く、依然として厳しい状況のまま推移しているのが実状であります。

  なかんずく、混迷する社会情勢と日本経済の再生を目指した構造改革への対応などの課題を抱える中で、本会を取り巻く環境は極めて厳しく、入札・契約制度と技術者制度の改革、成果品の電子納品・瑕疵担保の確保などに伴う競争性に重点を置き過ぎた結果、受注競争の激化とダンピング受注、不適格業者の参入などの弊害が表面化し、品質・施工・安全管理の不備などの問題が山積するなど憂慮すべく状況にあります。加えて財政三位一体改革への対応によっては、公共事業・公共投資の水準と民間設備投資の減少は不可避であり、業界・会員企業の疲弊を防ぎ切れない深刻な状態に陥っています。

  地質調査業という業界が形成されたのは、戦後20年代に土質工学・基礎工学の分野が急速に発達し、土質試験・土質調査法の規格化とともに、従来の経験に基づいた建設基礎工法が定量的設計によって施工されるようになってからだと言われております。

  戦後の著しい経済復興と建設投資に支えられ、土質・地質工学分野の建設コンサルタントとして、或いは社会資本整備事業の上流部門における地盤情報提供者として、発注者の良きパートナーとして位置づけられて発展してきたのであります。

  本会は、昭和34年に「東北ボーリングさく井業協会」として創立し、昭和38年の全国地質調査業協会連合会の発足と同時に「東北地質調査業協会」と改称して以来、今日までに47年の歳月を刻んでまいりました。その間本会は、地質調査業の技術力向上と人材育成、経営基盤の強化を図りながら、業界の社会的地位向上
を目指して活動を展開してまいりました結果、発注機関からの高い評価と信頼をいただけるまでになりましたことは、偏に協会設立以来、業界に携わっていただいた数多くの先人達が、技術・コスト・安全・施工管理面での様々な課題と向き合いながら築き上げ、維持してきた賜ものであります。

  顧客からの「信頼」と「品質の確保」は、私たち会員企業の良心として、遵守すべき最も大切なことであり、「品質に裏打ちされた信頼関係」が地質調査業の基本であり、使命でもあります。

  本会は、昭和52年の「地質調査業登録規定」の告示・施行と、昨年4月の「建設工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」の制定を機に、大型化・多様化する構造的市場のニーズ、特に環境問題や土壌・地下水汚染に係わる調査、地辷り・地震・火山・集中豪雨などの自然災害に関するコンサルティング、また海洋調査や遺跡・埋蔵物調査などの分野における地質調査・解析業務の需要がますます増大することを期待したいものであります。

  「島孤列島」という特異な地質がせめぎあう奥羽脊梁山脈に分断される「ふるさと東北」は、急峻な地形と地質構造が複雑且つ脆弱であり、しばしば地震や風水害などの自然災害の脅威にさらされますが、広大な国土と豊かな自然環境や歴史と文化を活かした「美しい東北」と、あたたかい人情の機微に育まれた「ふるさと東北」の安全・安心の担い手として、良質で効率的な社会資本整備を実現するためにも、土質・地質調査の普及・促進を図り、「技術と信頼に優れた会員企業」を目指して、これまで以上に発注当局からのご活用のインセンティブをいただくことが本会に課せられた責務であると認識しております。

  加えて、本会は、従来の上流部門での地盤情報・サービス提供から、中・下流部門までのすべてのプロセスに従事する「ジオ・ドクター」、或いは「ジオ・パートナー」として、業務の計画・調査・設計から施工・維持管理までの各段階における品質確保、且つ環境・防災・保全(維持管理)・リスク及び資産管理に係わるすべての業務の品質確保に寄与できる基幹産業としての役割を果たしてまいります。

  最後に、東北地質調査業協会及び会員企業各位のご発展とご活躍をご祈念申し上げ、新年のごあいさつとさせていただきます。
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