42.道具でわかる地質調査入門第3回 それゆけ地質調査探検隊

広報委員会  佐藤 道子 庄司夕里絵

み: 皆さん、こんにちは。今回から数回に分けて『サウンディング』を取り上げる事となりました!今回は、日本物理探鑛(株)さんのお庭で「スウェーデン式サウンディング」をやって頂きました。
ゆ: そ〜なんです。一口に『サウンディング』と言っても沢山あるじゃありませんか!?
支店長さん: えー、先ず静的と動的に分かれていて、静的というのはこれからやるスウェーデン式に始まって・・・(技術委員会の解説をご参照願います)、動的は標準貫入試験と簡易動的コーン貫入試験です。・・・云々」(実践前講習受けること30分?)
み: なーんだ、つまり前回学んだ標準貫入試験みたいなものの総称を『サウンディング』と言うのですね?
支店長さん: では、実践に移りましょう。
ゆ: あれ?装置というか、道具はそれだけですか?標準貫入試験みたいな大きな装置を想像していたもので・・・。
A氏: では、始めます。ロッドの先端にスクリューポイントを付け調査地点に垂直に立て、おもりを載せていきます。先ず0.05kN(ゆ:5kgと言ってしまい、ご注意を受けてしまいしました、ハハ・・・)から。
B氏: はい、0.05kNで10cm沈みました。
み: え、おもりを載せるだけなんですか?
A氏: はい、先ずはこの様に0.15kN、0.25kN、0.50kN、0.75kN、と1kNまでおもりの荷重のみでの貫入を記録します。
ゆ: はー、確かに静的ですね。何て地味なお仕事。
み: なるほど、先ずはおもりの荷重のみで地盤の硬さを見るのですね?
A氏: はい、そうです。じゃあ、続けますね。
B氏: 0.15kNで1cm沈んだので、トータル0.11m。次、0.25kNは変化なしで0.11m。次、0.50kNは1cm沈んだからトータル0.12m・・・。1.00kNでは50cm沈んだと。
A氏: では、次はロッドの一メモリが25cm間隔なのですが、おもりを一度はずして何回転で1メモリまで沈むか数えます。ハンドルを水平に保ちながら、1,2,3・・・
B氏: ストップ!6回転半です
A氏: 更に次のメモリ(50cm)まで。1,2,3・・・
B氏: ストップ!12回転半です。
A氏: 次、75cmまで。1,2,3,おっ
ゆ: わー、勝手に沈んでいきますね。今、スクリューポイントの辺りがかなり軟らかい土質という事ですね?
B氏: そうですね、自沈で1.25mまでいきましたね。止まったので、また、おもりを載せていきましょう。
B氏: 0.05kN、0.15kN、・・・1kN。変化無いですね。A氏とB氏がロッドが沈んで低くなったところで、ロッドを連結させてハンドルの位置が高くなると・・・
支店長さん: スウェーデン人が発明したから高いんでしょうねぇ。
み: あはは・・・
A氏: 又、回転させます。いーちっ。ん。
ゆ: 又勝手に、いや自沈ですね。
B氏: 36cm沈んだので、トータル1.61mですね。
A氏: 止まったので回転させます。1,2,3・・・50回。
B氏: 7cm沈んだのでトータル1.68mです。
A氏: これ以上は、変化が無いのでこれで終了となります。
み: 最後まで地味でしたね。そう言えば事前講習でこれが一番古い、1917年に発明されたものだと習いましたもんね。
支店長さん: さあ、ロッドを抜いたので見て下さい。サンプリングはしませんが、スクリューポイントやロッドに付着した土を見たり、ハンドルの手応えで、砂音、礫音等を感じたりして、地質が分かるのです。それも、あればデータに加えるんですよ。
ゆ: なるほど、簡単そうに見えますが経験が必要そうですねぇ。
み: この装置は簡易だから小規模向けという事でしょうか?
ゆ: 流石、先輩!目の付け所が違いますねぇ。
支店長さん: そうですね。地すべり地、狭い所や機械の上がらない所、最近では宅地の調査が増えて、こういう地盤だからこのようにした方が良いですよとアドバイスが出来ますし、連続的に出来て、時間の節約になるのも利点ですね。
み: 原始的に見えましたが、そんな利点があったのですね。
ゆ: 皆様、こんな暑い日に私達の為に、汗を流して下さって本当に有り難うございました!また一つ現場の苦労が分かりました!そして、(株)建設技術センター業務管理課碓井教光氏にもご協力頂きました。誠に有り難うございます!
技術資料 スウェーデン式サウンディング(東北地質調査業協会技術委員会)

まずは、“サウンディング”に定義される各種試験を列記します。これには、前々号(第41号)で紹介した『標準貫入試験』も含まれています(参照:「地盤調査の方法と解説<(社)地盤工学会>」)。



方法 名称 測定値 適用地盤 可能深さ 規格・ 基準
静的 スウェーデン式サウンディング 各荷重による沈下量貫入1m当りの半回転数 玉石・礫を除くあらゆる地盤 15m程度 JIS
ポータブルコーン貫入試験 貫入抵抗 粘性土や腐植土地盤 5m程度 JGS
オランダ式二重管コーン貫入試験 先端抵抗、間隙水圧 粘性土地盤や砂質土地盤 装置の容量による JIS
電気式コーン貫入試験 JGS
原位置ベーンせん断試験 最大回転抵抗モーメント 軟弱な粘性土地盤 15m程度 JGS
孔内水平載荷試験 圧力・孔壁変位量、クリープ量 孔壁が自立する地盤・岩盤 基本的に制限なし JGS
動的 標準貫入試験 N値 玉石・礫を除くあらゆる地盤 基本的に制限なし JIS
簡易動的コーン貫入試験 Nd 玉 石・礫を除くあらゆる地盤 15m 程度 JGS

※JIS:日本工業規格、 JGS:地盤工学会基準

 上表のとおり、JIS(日本工業規格)に則っている試験は、『標準貫入試験』『スウェーデン式サウンディング』『オランダ式二重管コーン貫入試験(通称:ダッチコーン)』の3種です。今回は、この中の『スウェーデン式サウンディング』について、以下に説明をします。
 『スウェーデン式サウンディング』は、(実態としては)深さ10m程度以内の粘性土・砂質土地盤を対象に“概略調査”“補足調査”として広く普及しています。普及している要因としては、“ボーリング調査(標準貫入試験)よりも安価であること”“N値への換算式が確立していること”が挙げられます。構造物の支持力を判定(判断)する場合等には、『標準貫入試験』で得られるN値を用いる場合が多いことから「ボーリング調査:1〜3箇所+スウェーデン式サウンディング:5〜10箇所」等の組み合わせにより調査業務が発注されることがあります。


【試験装置および器具】


★スクリューポイント(先端部)→長さ200mm±2mm
★ロッド→スクリューポイント連結用:径19mm±0.2mm、長さ800mm±0.8mm
→継足し用:径19mm±0.2mm、長さ1000mm±0.8mm
★おもり→100N(10kg)×2個、250N(25kg)×3個<合計:950N(95kg)>
★ハンドル+載荷用クランプ(全おもりを載荷した場合に耐えうるもの)
★引き抜き装置→三又+チェーンブロック、油圧ジャッキ等を使用する場合が多い。


【試験方法(概略)】




【1】 スクリューポイント連結用ロッドの先端にスクリューポイントを取り付ける。次に、ロッドに載荷用クランプ+ハンドルを取り付け(この載荷用クランプ+ハンドルで50Nの載荷状態)、50Nの状態での貫入量を記録する。
【2】 荷重を増加させ、その時点での貫入量を記録する。荷重の段階は、「50N(5kg)→150N→250N→500N→750N→1000N」とする。
【3】 1000Nでロッドの貫入が止まった場合は、その貫入量を記録した後に、鉛直方向に力が加わらないようにロッドを右回りに回転させ、次の目盛線(25cmごと)まで貫入させるのに要する“半回転数”を記録する。それ以降の測定は、25cmごとに実施する。
【4】 スクリューポイントが硬い層に達し、“貫入量5cm当たりの半回転数が50回以上”となった場合には、測定を終了する。


【記録整理】

【1】 荷重のみによって貫入が進む場合には、荷重の大きさ(Wsw)と貫入深さ(D)を記録し、貫入量(L)を求める。
【2】 荷重1000Nで、回転によって貫入が進む場合には、半回転数(Na)に対応する貫入深さ(D)を記録し、貫入量(L)を求める。
【3】 貫入量に対応する半回転数は、貫入量1m当たりの半回転数(Nsw)に換算する。
→例)上記の終了基準を換算すると、「100cm/5cm=20、Nsw=20×50=1000」となる。


【結果の解釈と利用】

◎N値への換算(稲田の式)
《礫・砂・砂質土の場合》
N値=0.002Wsw+0.067Nsw→1000N荷重の場合:N値=2+0.067Nsw
《粘土・粘性土の場合》
N値=0.003Wsw+0.050Nsw→1000N荷重の場合:N値=3+0.050Nsw
例)粘性土地盤:1000N荷重で25cm貫入させるのに50半回転を要した場合の換算N値
Nsw=50×100cm/25cm=200→N値=3+0.050×200=13
◎一軸圧縮強度への換算
qu=0.045Wsw+0.75Nsw→1000N荷重の場合:qu=45+0.75Nsw
◎許容支持力への換算
《平板載荷試験結果からの換算式》
qa=30+0.8Nsw※Wsw=1000Nの場合
《国土交通省告示による換算式》
qa=30+0.6Nsw
以上が概略の“試験方法”と“結果の利用方法”です。以下に留意点の一部を記載します。


【留意事項】


【1】 スクリューポイントは劣化(スクリュー部の磨耗)する。劣化したスクリューポイントを使用することにより測定値を過大評価する危険性が高いことから、極力新品および新品同様品を使用すること。
【2】 基本的には単管を挿入することから、貫入深度が深くなると摩擦抵抗により測定値を過大評価する危険性があるため、ボーリング調査(標準貫入試験)結果との対比を必須とする。
【3】 上記した換算式は、あくまでも過去の経験値によるものであることから、実際の現場でのボーリング調査(標準貫入試験)結果と対比し著しく差異が認められた場合には、現地での評価を優先すべきである。
【4】 実施箇所が平地でなく山地の傾斜地であった場合には、ロッド貫入の鉛直性に関して十分な留意を必要とする。
【5】 礫障害(先端部での抵抗感が無く空回りしている状況)による貫入不能となった場合には、実施箇所をズラして再度実施することが重要である。

 最後に、前述のとおり『スウェーデン式サウンディング』は、『標準貫入試験』の補足調査として実施するパターンが多いのですが、軟弱地盤の細かい層区分を実施する観点からいえば、25cmごとに強度(換算N値等)が算出可能であることから『標準貫入試験』よりも『スウェーデン式サウンディング』『オランダ式二重管コーン貫入試験』等の方が優れている場合もあり、調査計画を立案する際には“目的”“現地の状況”“構成地盤”等を勘案する必要があります。
<出典:「地盤調査の方法と解説<(社)地盤工学会>」、文責:技術委員会内藤祥志(国土防災技術株式会社仙台支店)>
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