東北地質調査業協会理事長    奥山 紘一

01.新理事長就任のご挨拶

 木枯らしに吹かれながら、天女の舞のように降りしきる雪明かりの中に、霞んでは見え隠れする家並みの灯りは、さながら光の芸術のようで幻想的である。そんな夜の暗闇と沈黙の中の寒燈の下で、あっという間に流れて行った一年の歳月が蘇って来る。特に北国の冬の日没は早く、夜がやたらと長い、そんな想いのうちに、年の瀬を慌ただしく過ごしてしまった。まさに“歳月人を待たずである。

 明けて新年は、甲申五黄土星(きのえさるごおうどせい)の年である。

 五黄土星は、五黄の育成作用と腐敗作用によって、時代に適合できなくなったものが姿を消して良き改革の芽が育ち、一気に好転のきっかけとなり得ると同時に、天変地異や大事件・大災害が発生しやすい年もあり、いざというときに備えて物質的にも精神的にも常に準備を怠らず、冷静に対処できる心構えをもつことが大切である、と言われるように、五黄中宮の今年は、“一つの時代が終わりを告げ、新しい時代へと変化する波乱の幕開けの年”であります。

 皆様には、すこやかに甲申年の初春をお迎えのこととお慶び申し上げます。又日頃、当協会運営と諸般の活動に関して、格別のご理解・ご協力を賜り、心から感謝と御礼を申し上げます。

 この度当協会の広報誌「大地」創刊号が平成元年12 月に発刊されて以来、本年1 月発刊号をもって、第40 号の節目を数えるに至りましたことは、誠に意義深いことであり、感慨一入の想いを強くいたします。

 この広報誌「大地」は、会員企業のみならず、数多くの発注機関・主要官庁及び各地の大学・技術専門学校などに贈呈配布し、当協会の存在価値をアピールするとともに、地質調査業の普及・啓発、技術の向上についてのPR 効果を高めることに役立たせております。

 あらためてこれまでの長い間、編集に携わられた広報委員会の皆様をはじめ、各号発刊の際に寄稿にご協力いただいた多くの関係者の皆様に対して、哀心より感謝と御礼を申し上げ、今後ともさらに充実した広報誌「大地」の末永い刊行を祈念するものであります。

 当協会は、上部機関である(社)全国地質調査業協会連合会の創立40 周年を凌駕すること5 年余、昭和34 年1 月、全国に先駆けて創立され、45 年の永い歴史と歳月を刻みながら今日までに地質調査業の社会的地位の向上と、会員企業の経営基盤の安定化に努めてまいりましたが、昨今の社会情勢・経済環境の激変、そして技術革新のうねりは、協会創立以来、未會有の危機的環境に陥り、まさに「変革への対応」を余儀なくされている状況にあります。

特に、業界市場の急速な縮小の中での入札・契約制度の改善、技術者制度の改訂、IT 化への対応など、地質調査業を取り巻く環境は極めて厳しいものがあります。

 かかる現状を踏まえて、当協会は、「地質調査業の21 世紀ビジョン」をベースに、専門技術の向上・研鑽、顧客の信頼とニーズに応えられる体質改善と強化を図りながら、今後の社会資本整備事業において、地質調査業の新たな展開を目指しての役割を果たしていくことが急務である、との認識のもとに、諸般の協会活動を推進してまいります。

 国土交通省が導入するCALS/EC に関しごあいさつごあいさつ2ては、電子入札講習会や電子納品に関する情報交換会、各種セミナーなどを積極的に主催・協賛し、また電子納品した地質情報が建設産業の下流工程に有効、且つ適確に再利用されることを目指しての「次世代CALS 対応研究会報告書」のCD −ROM 版の発行と会員への無料配布事業などは、まさしく(社)全地連・各地区協会との協働のもとでの地質調査業の構造的変革を先取りした積極的な事業であります。

 また、数年来取り組んできた土壌・地下水汚染分野での新たな市場への参入を目指して、「地質調査技士(土壌・地下水汚染部門)認定講習会」が平成14 年・15 年度に限り実施された結果、当協会では、既に840 名が有資格者として登録され、さらに本年1 月に204 名の追加受験の申し込みがあり、平成16 年度から実施される試験制度の開始を目前にして、その関心の高さがうかがい知ることができます。

 今年度の国土交通省東北地方整備局との意見交換会は、平成13 年・14 年度に続いて昨年12 月9 日に開催され、光家康夫企画部長以下本局幹部の皆様をお迎えして、例年を上回る活発な意見交換会の実を挙げることができました。当協会からは特に、
1 .社会資本整備の効率的な執行と地質調査について
2 .発注形式・指名業者選定について
3 .新技術・新分野への対応について
4 .その他として、「新しい入札システムについて」、「電子納品及び成果品について」、「テクリス登録制度及び情報公開について」のテーマで要望・提案を含めて、意見の交換を行いました。

 あわせて、「島弧」という多様な地質がせめぎあう国土、特に奥羽脊梁山脈に分断される東北地方は、急峻な地形と火山やグリーンタフに代表される脆弱な基盤が広範囲に分布しており、頻繁する巨大地震や自然災害の脅威にさらされる、それぞれの愛する郷土の安全と環境の保全を図るために、当協会会員企業が一致団結してその任務の重要性を認識し、地質調査業を通じて社会に貢献してまいります、との強い決意を披瀝いたしました。

 ご当局からは、「“強く、美しい東北”の実現を目指した社会資本重点計画を策定する」、「地質調査業の役割として、川上部門における情報提供とトータルコストの縮減に期待する」、「発注形式・指名業者選定には、業務成績・実績評価とともに技術力をしっかり評価する」など詳しいご回答と、今後地質調査業界が活力ある産業として継続的に発展していくためには、従来型の業界体質の改善・調整期のひずみに呻吟することなく、環境・防災・保全・リスク及び資産管理などの新たな技術分野を視野にいれながら、「変革への対応」を図ることが不可欠である、とのご指導をいただくことができました。

 私は、今年度東北地質調査業協会理事長として、地質調査業の社会的地位向上と当協会45 年の歴史と実績を踏まえて、今後地質調査業界が次世代を担う若者をも魅了する産業として、よりダイナミックで魅力的な産業に発展することを目的をとする「社団法人格」認証取得と、優れた専門技術の研鑽と顧客の信頼に応えるための行動指針「倫理網領」の制定を最重要課題として取り組んでいくことを決意表明いたしましたが、時を移さず協会内に二つの特別委員会・ワーキングチームが発足し、目標達成に向けて着実に機能しはじめておりますので、会員の皆様には引き続いてのご理解とご協力をお願い申し上げます。

 最後に東北地質調査業協会のご発展と会員各社のご繁栄を心からご祈念申し上げ、あわせて広報誌「大地」第40 号発刊記念にあたってのご挨拶とさせていただきます。

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